緊張のあまり……



「それで? 竹原の感性で明孝さんがかっこいいってのは分かったけど……それの何が困るの?」


 “竹原の感性で”というフレーズを強調されてしまったけど、それについては今は黙っておく。だって話が前に進まないのだもの。


「先生がかっこよ過ぎるせいですっごく緊張したり照れちゃったりして、先生に不快な思いをさせてしまってるかもって。これも全部先生がかっこよ過ぎるせい……」


「相談のふりして惚気るのやめてくれる?」


「相談です、相談!」


 さっきからわたしは事実しか言ってないのに統瑠くんは厳しいなぁ。


「じゃあ竹原が思う不快な思いってどういうの?」


「そ、それはその……先生とふたりきりになって、えっとね、そ、になった時にね、どうしても緊張しちゃって最後まで出来ないの、そういうのが続いたら先生も嫌になるかなぁって」


「…………そういう雰囲気って?」


「え? その…………キ、キスなんだけど」


 きゃっ! 言っちゃった、恥ずかしい!! 熱くなった頬を両手で包み込むわたしを、統瑠くんは呆れきった表情で見つめている。


「キスなんかでそんな調子じゃ、その先はどうすんの? 竹原、緊張し過ぎて死んじゃうんじゃない?」


「……その先って?」


「そりゃでしょ」


「セッ……!!」


 セックスって、あの親密な男女がお互いに裸になって触れ合うっていうアレよね……。そ、そうか、付き合うってそういうこともあるんだった。


「ご、合法的に先生の裸を見られるのは嬉しいけど……、」


「合法的にって何だよ」


「それは確かに死にはしないけど、緊張のあまり……」


「緊張のあまり?」


「……今食事中だけど言っていい?」


「……まぁ、いいけど」


 もし、先生とセックスをしたらきっとわたしは……。


「ゲロを吐くと思うの」


「俺今食べてるのカレーなんだけど? マジふざけんな」


 ひぃん! 怒られた!

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