カレーライスとパスタ


 食堂にて、統瑠くんと向い合わせで席に座る。

 わたしはいつもの日替りパスタを頼み、今日はミートソースパスタだ。一方で統瑠くんはカレーライスを食べているのだが……統瑠くんとカレーライスは何ともミスマッチな感じがする。


「統瑠くん、カレー好きなの?」


「別にそういうわけじゃないけど」


 そこでふと気がつく。今日はカレーライスが安かったことに。これは確実に気をつかわせてしまったみたいだ。

 それ以上はカレーライスのことに触れず、わたしはまず付け合わせのサラダから口にした。


「明孝さんとなんかあった?」


 どう切り出そうかと迷っていたので統瑠くんの方から話を振ってくれるのは正直助かる。


「えっとね、何かあったわけじゃなくて……その、先生ってほらでしょう? だから困ったことがあって──」


「待て待て、アレって何? その前提を濁したまま続けるなっての」


 今日はよく「待て待て」と言われてしまうなぁ。まるでわたしが落ち着きがないみたい。

 それにしても何故統瑠くんは不思議そうな顔をして首を傾げるのだろうか? いちいち言わないと分からないのかしら? わたしは皆が知り得る純然たる事実を粛々と告げる。


「濁すもなにも、先生はだっていう常識的な前提だけど?」


 わたしのそれを聞いた統瑠くんは大きなため息をつくと、可哀想なものを見るかの様な眼差しでわたしを見る。


「それは常識では、ない」


 何ですって?! それは聞き捨てならないわ!!


「何でそんなこと言うの?? 先生かっこいいじゃない!」


「明孝さんがイケオジっていうのに異論はないし、俺もかっこいい人だとは思うけど……だけど常識では、ない」


「え~? どういうこと??」


「あー、自分が思ってることが何もかも常識だと思うなってこと!」


 そんなことを言われても先生がかっこいいのは誰の目から見ても明らかなのに……うーん、統瑠くんは難しいことを言うなぁ。

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