第5話

部屋は静寂に満ちていた

誰もがその空気を壊すまいと固唾をのんでいる

知らず知らずのうちに手を握りしめ

固唾をのみ

目をせわしなく瞬かせる

起きる

これから起きるそれを

開店しました

人々は歓喜した

なだれ込みように行列がなだれ込む

先ほどまでが噓だったかのように部屋は喧騒とかす

待って

待って

ようやく来る

鼻腔をくすぐるこのにおい

湯気が立ち込めて

昼からこんなもの食べていいのか

でも、みんなも食べに来てるし…

食べる

熱い

額から水滴が落ちる

鬱屈とした気持ちはどこへやら

ただ箸を進めることに執着する

食べて

食べて

食べ終わる

暖簾をくくると途端に強烈な幸福感が体を駆け巡る

そう

平日の昼から食べるにはそれは革新的過ぎたのだ

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茜模様 @hasuu

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