10.素材還元

「あっ、魔物!」


 咄嗟に身構え、腰に手をやる。だけど、手は空を掴むだけ。


「武器装備するの忘れていた!」


 素材の事で頭が一杯になって、アイテムボックスから剣を取り出すのを忘れていた。


「ヒナ!」


 その時、黒ヒョウのシオンさんが私の目の前に出る。鋭い眼光で魔物を睨むと、目の前に黒いオーラを纏った球が出現した。


「食らえ!」


 その黒いボールは真っすぐに魔物に飛んでいき、その体を暗黒に包み込む。その球は次第に収縮し、小さくなって消えた。すると、あの魔物の姿も同時に消えてしまった。


「ふぅ……なんとかなったな」

「シオンさん、ありがとうございます」

「ヒナが無事で良かった。だが、武器を装備してなかったのはダメだったな」

「あはは。危うく怪我をするところでした」


 本当に危ない所だった。シオンさんが咄嗟に出て来てくれなかったら、あの牙が突き刺さっていたかもしれない。


「まぁ、私も確認を怠ったのも原因か……」

「いえ、シオンさんは悪くありません。私が素材の事ばかり考えていたせいです」

「まぁ、次からは気を付けるように。先に剣を装備しておけ」

「はい」


 そういうと、私はアイテムボックスから剣を取り出した。この剣はクラフトワールド・オンラインで愛用していた剣。これがあれば、大抵の魔物は倒せるだろう。


「これで大丈夫です」

「よし、なら行くか。次は何を探す?」

「そうですねぇ……。魔物の素材が気になります。素材還元って魔法を使ったら、どんな風になるのか確かめたいです」


 自然の素材を採ったし、次は魔物の素材だ。探索魔法で周囲の気配を探ると、近くに魔物の気配がした。


「こっちです」


 そちらの方に歩き出す。歩いて数分、木の影に魔物の姿を見つけた。それは先ほど襲ってきたウサギの魔物だった。


「あの魔物の名前はキラーラビットだな。初心者冒険者が戦う魔物だ。すばしっこくて、鋭い牙で襲ってくる」

「なるほど……。だったら、素材は牙でしょうか? それとも、毛皮? 素材還元の魔法を使ったら、どんな風に素材として出てくるか……そこが問題です」

「……ヒナ?」


 クラフトワールド・オンラインだったら、魔物を倒すと肉体は消滅して代わりに素材が残る。この素材還元も同じ機能らしいから、そんな風に出てくるはず。


 キラーラビット……どんな素材が出てくるか楽しみだ。牙だったらアクセサリーにして、毛皮だったらどうしようかな。


 その時、額に弱い魔法衝撃がした。


「いたっ」

「コラ、ヒナ。また素材の事を考えていたな。今はあの魔物と戦う事を考えるんだ」

「あっ、そうですね。えへへ、ごめんなさい」


 いけない、また素材の事を考えていた。気を取り直して剣を抜くと、キラーラビットに近づいていく。


 戦うのは苦手だけど、初心者冒険者御用達の魔物に負ける気がしない。


「キシャーッ!」


 すると、キラーラビットがこちらに気づいた。体をこちらに向け、地面を蹴って駆け寄って来る。その動作を見極め、私は剣を振るった。


 ブシュッ!


「キュッ!」


 剣先は見事にキラーラビットの体を捉え、地面に転がった。キラーラビットはピクピクと痙攣して起き上がる様子はない。


 だったら、ここで!


「素材還元!」


 手をかざして唱えると、キラーラビットの体が光に包まれた。そして、その光が弾けると、地面には幾つかの素材が残された。


「わっ、本当に一瞬で素材になっちゃった!」


 クラフトワールド・オンラインみたい! 私は駆け寄って、その素材を確認した。


「えーっと……。牙と毛皮とお肉と、この小さな石は?」


 残っていた素材に見慣れない小さな石があった。


「それは魔石だな。魔物には必ず魔石があり、冒険者ギルドで売るとランクアップの功績になり、換金するとお金になる」

「なるほど。じゃあ、これを冒険者ギルドに持っていけばいいんですね」


 じゃあ、これも大切に持っていかないといけない。それにしても、入手出来た素材が多くて嬉しい。もっと牙と毛皮を集めて、クラフトの素材にした。


「私……もっと魔物素材を集めます!」

「お、おぅ……そうか? 急にやる気に出てどうしたんだ?」

「沢山の素材が手に入って嬉しいんです。もっと沢山手に入れたいです!」

「そうか、素材を手に入れてやる気が出たんだな。頑張るといい」


 シオンさんの応援を得て、私はやる気を漲らせた。それからすぐに探索魔法を使い、周囲の気配を探る。すると、すぐにキラーラビットを見つけることが出来た。


 私はその場所に行き、キラーラビットを討伐する。素材還元の魔法を使うと、また沢山の素材が出てくる。……ふふふ、素材、いい。


「はぁ、はぁ……もっと、もっと素材を……」

「……ヒナ?」

「もっと素材を出せー!」


 広範囲に探索魔法を瞬時に展開し、キラーラビットの居場所を突き止める。身体強化の魔法で瞬時にその場に行き、キラーラビットを瞬殺する。そして、素材還元の魔法を使うと、また沢山の素材が!


「素材ーーーッ!」

「ヒ、ヒナ? ど、どうしたんだ?」

「まだです、まだ足りません!」

「ヒナーッ!?」


 素材が私を待っている! だから、もっと、もっと、キラーラビットを頂戴!

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