11.クラフトの時間
「ふふふっ、素材がいっぱい」
机に乗せた素材を見て、嬉しい気持ちが溢れてくる。凄い勢いで素材を集めたお陰か、午前中で素材が集め終わってしまった。
いや、素材を集めようと思えば、まだ集められた。だけど、素材を手にすると、すぐにクラフトをしたくなってきたのだ。
その欲望に耐え切れずに、お弁当を森の中で食べた後にすぐに戻ってきてしまった。
ニコニコと笑って素材を見つめる私を黒猫のシオンさんが呆れた様子でため息を吐く。
「全く……あんなに人が変わるとは思わなかったぞ。突然、狂ったようになって、驚いた」
「あ、あはは……。すいません。久しぶりの素材とかクラフトの事を考えると、つい暴走しちゃいました」
「まぁ、ヒナの新しい一面が見れて楽しかったがな。それで、何を作るのか決まったのか?」
「はい! 牙は男性向けの首飾りにして、毛皮は女性向けのアクセサリーにします」
暴走していながら、作る物を考えていた。牙はそのままでもカッコいいから、少し装飾を施して首飾りに。毛皮は玉にして、中にビーズクッションの素を入れてナスカンを付ける。
「どんなものが出来るか楽しみだな。見ていてもいいか?」
「はい、大丈夫ですよ」
人に見られるのは緊張するけれど、少しワクワクしてきた。
「では、始めます。『工具召喚』!」
言葉を唱えると、私の目の前に電動工具が現れた。この工具、電動なのに電力がいらない優れモノ。まさに、ゲーム上独自の工具と言っていいだろう。
「まず、牙を加工します。牙を繋げるための紐を通すために穴を開けます」
牙は綺麗に洗浄してあるので、そのまま加工が始まった。電動工具を起動させると、慎重に牙に穴を開けていく。それを全ての牙に施すと、穴開け作業が終わった。
「次に装飾の肝となる、溝掘りですね。ふふっ、どんな模様にしようかな」
ただの牙だとカッコよくないので、牙に溝を掘って模様を描く。牙を一つ手に取ると、電動工具で慎重に溝を掘っていった。イメージは炎。メラメラと揺れる炎をイメージして溝を掘っていった。
「ほう、カッコいい模様だな。ヒナはセンスがあるんだな」
「えっ、そ、そうですか? えへへ、嬉しいなぁ」
私の手元を覗いていたシオンさんからの誉め言葉。細かい作業を褒められるのって凄く嬉しい。完成品はもっとカッコよくなるはずだから、楽しみにして欲しい。
楽しい時間はあっという間に終わり、溝を掘り終えた。
「じゃあ、次はコードに牙を通していきます。『素材召喚』!」
またスキルを発動させると、目の前に黒いコードが現れた。
「なん、だと……。そういう素材が出てくるのか!?」
「はい。こういう細かい素材なら、スキルで一発なんです」
「はぁー、そうなのか。つくづく、クラフトワールド・オンラインには便利なスキルがあるんだな」
そう、クラフトワールド・オンラインには便利なスキルがいっぱいある。その一つがこの素材召喚と言ってもいいだろう。
アイテムを作るには素材だけじゃ足りない場合が多くある。その足りない部分を補うための素材を自由自在に取り出せる機能がついている。そのお陰で、私達は気軽に色んなアイテムを作り出すことが出来た。
「えーっと……順番ずつに牙を通してっと。はい、キラーラビットの牙飾り、完成です」
コードを揺らせば牙が揺れ、受けた光の角度でチラチラと模様が浮き出る仕様だ。うん、これはカッコよく出来たんじゃないだろうか。
「カッコよく出来たな。これなら、きっと売れるだろう」
「そ、そうですか? そうだったら、いいな……」
売れた時の事を考えると、嬉しくて表情が緩む。しばらく、ニヤニヤとしていると、ハッと我に返った。
「よし、次はキラーラビットの毛皮でアクセサリー作りです。『裁縫道具召喚』!」
言葉を唱えると、裁縫に必要な道具が現れた。
「まずは、毛皮をパーツ事にハサミで切って……」
「おいおい。線も聞かず、型紙も使わず、大丈夫なのか?」
「設計図は頭の中に入っているので、大丈夫です。それに裁縫技術はスキルマックスなので、一ミリも狂いません」
「それは凄いな……」
だから、何も問題ない。軽々とパーツ事に切り分けると、必要な分の毛皮を切り揃えられた。
「次は縫います」
切るのも楽しいけれど、縫っている時も楽しい。針に糸を通すと、パーツ事を繋ぎ合わせて縫っていく。
さくさくと塗っていくと、どんどんパーツがくっ付いていく。そして、最後のパーツを付ける寸前で手を止める。
「じゃあ、次に中に詰め物をしますね。『素材召喚』!」
言葉を唱えると、目の前に袋に入ったビーズクッションの素が現れた。その素を繋ぎ合わせた毛皮の中に入れていく。
「これで、良しっと。じゃあ、ナスカンを付けて、蓋を閉じます。最後に毛並みを均等にするために、ハサミで毛先を調節すれば……ウサギの尻尾のアクセサリーの完成です!」
コロンと丸まったウサギの尻尾のようなアクセサリーが出来上がった。
「ふふっ。ふさふさと毛並み、モキュモキュの感触。これは最高ですよ!」
「どれどれ……おっ! これは癖になる感触だ!」
アクセサリーを差し出すと、黒猫のシオンさんが両手でふみふみして感触を楽しんだ。その光景に癒されていると――。
「あっ、忘れてた!」
「えっ、ど、どうした!?」
「能力の付与を忘れていました」
クラフトワールド・オンラインでもそうだったけど、こういった装飾品には能力の付与を必ずとしてやっていた。そうしないと、売れないのだ。
「えーっと、素材の魔力量はどんな感じかな?」
能力の付与は素材に含まれている魔力量で決まってくる。二つの装飾品に手を重ね、その魔力量を探る。
「……うん。これなら能力の付与は出来そう」
「初心者冒険者御用達のキラーラビットの素材に能力の付与、だと?」
「出来ますよ。見ててください」
私は意識を集中して、装飾品に魔法を発動させた。ちょっと抵抗感があるけれど、これなら問題なく付与出来る。力を入れて魔法の付与をすると、能力が定着してくれた。
「出来ました。牙飾りには『疲労回復』、尻尾には『幸運』をつけました」
「なっ……!! そ、そんな能力を付与出来たのか!? あ、ありえない!」
「そんなに驚いてどうしたんですか? これくらいなら、この程度の能力は付与出来ますよ」
「この程度って……! かなり高度な能力の付与だぞ! こんな低級な素材で作ったアイテムに簡単に付与出来るなど、ありえない!」
そ、そんなにありえないかな? でも、普通に出来たし……大丈夫だよね?
「付与出来ましたし、大丈夫です。さぁ、もっと沢山作って、能力付与もやらないと!」
「こ、こんな高度な付与をしたアイテムをまだ作るだと!?」
「ふふふっ、これからが本番ですよ」
「一体、どうなっているんだ!?」
驚くシオンさんを他所に、私は二つ目の装飾品を作り始めた。
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