9.素材採取へ

「ふふっ、上手に出来た」


 箸を離して、お弁当箱を見る。一つ目のお弁当箱にはハムとチーズのサンドイッチに卵サンドイッチが交互に詰められている。


 二つ目のお弁当箱にはからあげ、即席ピクルス、果物が詰められている。色とりどりに詰められたお弁当箱を見て、達成感が胸に広がる。


「美味そうな弁当だな。これなら、素材採取も頑張れそうだな」

「シオンさんの分は皿に盛ってありますから、時間が来たら食べてくださいね」

「今すぐにでも食べたいくらいだ」

「もう、ダメですよ。朝食食べたばかりじゃないですか」


 素材採取に外へ出るために、昼食用のお弁当を作っていた。お弁当作りはいい。色どりやバランスを考えて作るのが楽しい。なんて言っても、この小さな箱に詰めるという作業が好きだ。


 後は水筒にお茶を入れて、お弁当箱を布で包めば準備は完了。アイテムボックスに入れておく。


「よし。とうとう、素材採取か。どんな素材があるから楽しみです!」

「私もついて行く。きっと、私の魔法が役に立つはずだ」

「何から何までありがとうございます。えへへ、一人じゃない素材採取……楽しみです」

「それは嬉しいな。思う存分楽しむといい」


 クラフトワールド・オンラインではずっと一人で素材採取していた。それはそれで夢中になれて楽しかったけれど、誰かと一緒に素材採取もしてみたかった。その夢が叶う。それが、とても嬉しかった。


 屋敷を出ると、黒猫のシオンさんが私の前に立ち塞がった。


「素材採取の場所までは時間がかかる。私に乗ると良いだろう」


 そう言うと、黒猫の体が急に大きくなった。その姿は大きな黒ヒョウみたいでかっこいい。


「わぁ! そんな事が出来るんですね!」

「この体は魔力媒体で出来ているからな。私の意思で姿形を変えられる。さぁ、乗れ」

「では、お邪魔します。……わぁ、フカフカ!」


 恐る恐る背に乗ってみると、柔らかい弾力と気持ちのいい毛並みが良く分かる。これは……癖になる乗り心地!


「では、しっかり捕まっていろ」

「はい! ……わっ!」


 黒ヒョウのシオンさんが力を籠めると、軽々と飛び上がる。空中を蹴り、空へと舞い上がる。まるで、魔法のような状況に胸が高鳴っていく。


 そして、空高く登ると眼下に町が広がっていた。それはとても広大で、見渡す限りに家々が建ち並んでいた。


「わぁ! 大きな町なんですね! それにお城もある!」

「ここは王都アルゼリア。国で一番大きな町になる」

「そんなに大きな町なんですね」


 まさか、今いる場所が王都だなんて思いもしなかった。王都なら色んな物がありそうだし、それに出会うのが楽しみだ。


「さて、目的地はどうする?」

「まだ、この地方の事は良く分かっていないので……。初歩の冒険者が行く場所に行きたいです」

「そんな所でいいのか? もっと、良い素材が手に入る場所の方が良くないか?」

「少しずつ、探索範囲を広めて行こうかなって考えています。見逃す素材があったら悲しいですから」


 やはり、ここは順番に行くのがいいと思う。その方が、素材の取りこぼしもないし、思わぬ素材との出会いがあるかもしれないからだ。


「では、初心者が行く森に連れて行こう」

「お願いします」


 そう言うと、黒ヒョウのシオンさんは空中を蹴り、走って進んでいった。


 ◇


 降り立ったのは普通の森。穏やかな空気に包まれていて、小鳥の鳴き声が聞こえてくるような森だった。


「ここが、初心者が行くような森ですか……」

「こんな所に良い素材があるとは思えないが……。まぁ、好きに素材採取をするといい」

「はい!」


 とうとう、素材採取が始まる。胸が高鳴って嬉しい気持ちになる。


「まずは探索魔法で……」


 いつも通りに探索魔法を発動する。すると、広範囲の詳細が見ているように分かる。動き回っている魔物がいて、地面に生えている素材があった。


「なるほど……。こっちですね」


 行く場所は決まった。まずは素材を採取するために、森の中を進む。素材の気配を辿っていくと、目的の場所に辿り着いた。


「えっと……この辺に……あった!」


 周囲を見渡すと、目的の素材を見つけた。駆け寄って、すぐに鑑定してみる。


【ポポント草】


 説明:傷口を癒す効力のある薬草。主に低級回復ポーションの材料になる。


 品質:100


「なるほど、これは低級ポーションの材料になるのか。ポーションは階級があるみたいだね。素材によって、階級が違ってくるのかな?」


 短い説明でも見えてくるものがある。低級という説明を見て思うのはポーションには階級があるということ。それに回復という文字で、回復以外にも効力が備わったポーションがあるという事も分かる。


 この世界には沢山作れる物がある。それが知れただけでも、とても楽しい気持ちになった。


 丁寧にポポント草を取ると、アイテムボックスに入れる。


「一つ目、ゲットだね!」

「こんなに早く見つけるなんて凄いな」

「はい、見つかって良かったです。この調子で沢山の素材を見つけます!」


 一つ目の素材を採取して、気持ちが上向きになる。やっぱり、素材採取は楽しい。このまま、沢山の素材をゲットして、クラフトをして――。


 そう、思っていた時、木の影から何かが飛び出してきた。


「シャーッ!」


 それは大きなウサギの形をしていて、鋭い牙が生えている魔物だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る