PART3 その4
数分の沈黙について、ここで描く必要はないと思った 余りにみっともなく、あまりに乱れていて、どうしてもこの話には関係ないことだからいずれあなたにはこの苦しみの総括を話すだろうと思い、何も記さない ただ、私は諦めて心の空白を見つめ、一つの片方は赤く、もう片方の青いカーテンによって遮られた巨大な教会の隅の壁で止まっていた。
カーテンを引くタッセルの前でオルガ、立ち止まり壁画の説明をし始めた。
「1941年のハワイでのある調印式に起きた出来事に描かれた絵画です 調印式の中身はこう、イギリスとユーラシアは手を組み、枢軸同盟を打ち倒す。そのために二ホンは新興国として協力しろと、元々空島の領有をめぐって民国政府とぶつかっていましたから、これは嬉しいお誘いでしたでしょう。あなたの祖母は嬉々として条約を結ぶことにしましたがあなたの母親は調印式前日に反対派として大手を振ってラジオに訴えかけました。『ハワイにて、人類を引き裂く戦争を長引かせる卑劣な条約が結ばれようとしています。日本人はまだ世界各地に散らばって暮らしており、これにより多くの日本人が損害を被る可能性があり、祖母はそれを考えてない』と。 ですが、一度決まったことですから、渋々調印式に出ます、場所はイオラニ島、あなたの祖母は嬉々としてこの条約をすばらしいものになると願ったでしょう。ですがどうやら、敵は枢軸だけではなく月にも居たようで…送り込んできたのでございます、傭兵業を務める天使を」
「さぁ、ご笑覧あれ!かつてあなたが見た絵の価値が変わる瞬間を!この世で最も多くの人間を殺して来たクラブ27統領、青葉イオラニ・ミコトの習作を!」
私はうなずくだけで答える。この瞬間の静けさだけは忘れていたくはない。
その瞬間の静けさだけはソイツの存在を認めず勢いよく開けられるカーテンの残像が彗星のように見えた青い球と赤い球がはじけるようにして現れた
不気味な雲が渦を巻く渡り鳥の一匹もいない汚染されたアオフ島が遠くあり
その視点は技術の結晶 紫色の海にたつ空中要塞イオラニ島にてのこと
新進気鋭の英雄たちが乗ったプリンス・オブ・ウェールズは栄光ともに静かに沈んでいく
手前ににてミサイルが着弾しセンタービルは壊れて煙が上がる
逃げ遅れた人々はビルの窓越しで怯え、しかし力強くただ情景が終わることを望んだ
そして水上で戦う二機のドールは互いの影に向かい合って撃ちあう
1941年サンフランシスコ条約にて起きた、この時代によくある天使同士の抗争
およそ3かけ10の巨大な、出来事の一幕を残そうとした人の絵画
戦争絵画のたぐい、それだけではない 少なくとも私にとってただネヴィルソンともマルクとも違う、始めて見た時に心を奪われたその絵画であった 窓からでは見えない知らない聞こえないほんとは世界なんて知りたくないと願った私の 井戸より深く 海より深く 記憶のように深く 浅く浅く 浅い 浮かんだ島から落ちた私が見た、初めて世界を理解した瞬間の記憶と接着した。
勿論、見ているのは私だけではない、ソイツは絵画に、品定めするようにそして手を触れないようにそっと腕枕の差で置くと、そのまま彼は天まで手を置いてゆき、語り始めた
「すべてはあなたの祖母の仕組んだことでした。
祖母は懐疑に包まれ自分の力が老いていくうちに奪われてしまうことを恐れたのです、祖母は外からやってきた人にもかかわらず…だからあなたの母を次代に指定し、自分の権勢を誇ろうとしたのです。
ですが、あなたの母が邪魔になった、なんならイギリス人も ロシア人も 中国人も ひいては日本人も皆邪魔だと、そう思われたのです。だからクラブ27、そうドイツ帝国を崩壊させる前のあの悪魔の集団たちに頼み込んだのです!
事件は簡単、調印式にイオラニが襲ってきた! あなたは聞いたのでしょう、母が死ぬ前にその経緯を だから私の言葉に嘘偽りないと知っている。
あなたの文通相手があなたを監視し、あなたをいずれ殺そうと企んでいることも知っている! 疑いなさいソーニャ、青葉イオラニ・ミコトこそ、70年の今日、殺しに来た相手…!憎むのです…!そして立ち上がるのです…!過去を乗り越えて未来に目を向けるのです…!」
私は彼の言うことが全て真実だと、そうは思わなかった。
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