PART3 その2
皆天使の真似をする、あるものは唄で、あるものは運動で、あるものは地下で、あるものは骨盤レコードで、あるものは仏陀として、それらは簒奪者でこそあり、天使それぞれ言うことが違うからまとまりはないがそういうものだと社会が言っていた。
音はこの場のしずけさを伝えている 言ったら終わるようなことを静けさだけで言ったと嘘をついている ノライアはそのやさしさをけん盤一つ指一つで表現して見せた ノライアの顔は良く見えない、そんなに今の私が覚えてないのもあるのだろう 影が覆って時間泥棒である彼らのために時間は過ぎていってる。
私は言い終えようとしたことがばかばかしくなり、座り込んで、彼女の演奏が終わるのを待っていた。
彼女の弾く曲は鄧 雨賢という中国人の作曲家の曲、『望春風』であるらしく力強い音が心地よく、もう少し親身になって母のことを聞けばよかったなと今更思った。
今もなお、この曲は上海条約機構の台湾独立運動家たちがこの曲を旗印に苛烈な統治への抵抗を静かに郷愁しながら唄ったものらしいが、今この曲を弾く彼女は新しい出会いを唄ってくれているのだと、今は思う。
出流は座る私の横で教会の長椅子にこしかけて真剣なまなざしで言った「ソーニャ、言わなくていいことだらけの世の中なのは分かったよね?でも大丈夫、ここでなら君は何を言ってもいい。いずれ君が夢を見た時、思い出して欲しいことがあるんだ だから」だから、私はその言葉の先を聞きたかったのに夢の世界に何者かがやってきた。
「これは夢だ」ズームバック、カメラ
後ろに何者かがいる、拘束されて動けないのに、夢を写すカメラだけが近づいてくるその男の闊歩を写している。
一歩一歩の音が大きく響き、どれだけ恐ろしいか 私は今目線に映る限り、動けるものを探している。 曲はすっかり止まっていて、イライジャはピアノの前に立っているはずなのに静かで、10歳の私は座り込んで、出流の話を真剣な顔になって聞いている、顔と目を動けぬまま。
一つが赤くもう一つが青いカーテンに覆われた絵画もそのまま開かれることはない。ただ硬直しており、思えば先ほどより空気が冷えてる気がする。
しかし、夢がこうなら、天使とは何かを考えるほかなかった、本来であれば私はあの二人と一緒にあの絵画を見たはず、その出会いこそ初恋であったのに 誰かが沈黙を破って言葉を言わなければ動けない。
その時を動かす権利の無い私は怯えが浮き上がっては水脈に沈む言葉の源泉に、枯れつくすまで、待つしかない状態であったから、何者かがその言葉を吐くとは思わなかった。
「アクション」私は秘められた緊張から解き放たられ、教会の隅で倒れて横になった。
そして声の持ち主の方向へにらめつけるようにして見た。それは意外な人物であった。
「神父、どうしてレグザ...どうしてここに」
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