PART2 その4(終)
昨日までいたイオラニ島の下、先ほどまで見えたサトウキビ畑が見えている 一昨日とは違い風の音と重なるサトウキビの揺れる音が力強く聞こえている
ニイハウ島、この島は祖母の先代が買い取った島であり、消防署もなければ病院もなく、何か村というには小さく、ただ教会がある程度である。
私たちは丘を登って、その教会へと向かっていることだけがただ分かっていた。
私は隣の男に目をやる、この男は前日自分が天使だと名乗った。
「天使らしいわね、多くは傭兵業を最近やってるけどあなたは手に職をつけているのかしら?」牽制の意図もあったが、やはり初めて会うその対象に興味がある。
この世界には天使が27人いる。
1812年、燃えるモスクワまで快進撃を繰り返したナポレオンに反撃しロシア人は追い返そうとする中、すべての戦争を止めるべく天から最初13人の天使たちが飛んでやってきた。
文字が日本文字しか読めない天使らしく彼らは暮らしになじむのに時間がかかったが、世界各地に二ホン人が散らばっていたから二ホン人たちに助けられて、あるものイギリスの上院議員にあるものは東アジア一帯の経済圏に5割の影響力を持つ大企業のCEOにあるものはまた数奇な導かれからアイルランドの王様になったりした。
天使が人間と違うのは、飛べることともう一つマンダラが複数重なっていることだ。
天使たちは人間には一つはあるマンダラと呼ばれるものが重なってるらしく、その重なりを上手く使って、モナドという幻術のたぐいを使えるらしい だから何もなくとも指を反らすだけで銃を持つ相手を退けることもできる。
そして何より天使は痛みを感じても死ぬことはないらしい。
それに彼女たちの次の特徴はある新聞記事の一節で見たもののはずだ。
『基本的に我々よりも自由で 我々よりも主権的で 我々よりも暴力を用いて権力を用いて人を裁いてきた
彼らは私たちとは違う世界からやってきてその記憶をもって登場した際、慎重の介入を行ったが その結果私たちはおそらく天使たちとの記憶とは全く違う世界になった。
例えば天使の記憶の世界の人たちに聞くが、君たちの宇宙はどうなっている?
君たちの宇宙はいまだ誰もが生活を送り、物資を仕送りしながらひどい労働環境や賃金に対して宇宙移民たちがストライキを行える環境になっているだろうか?
太陽系の奥底、クラゲの死体について君たちは見ただろうか?
私たちは移民船団を作って、ガンフロンティア1~47までの新アメリカをつくって冒険者たちを喜ばせたがどうだ?
君たちのアメリカは多く人を殺したし、多く簒奪したから歪んだ旅路になった15世紀を私たちも味わったが、その蛮行と違い希望にあふれているがどうだろうか?
君たちよ 歴史はどうなった?
私たちは同じく見えないんだ この先三極世界の終わりが見えないんだ。
君たちよ 天使の記憶の奥底に暮らしている者たちよ 途方もない絶望が君たちにも同じく待っているんだろうか…
それとも実は君たちも天使で天使だらけの国から27人はやってきたのだろうか?
どうか答えてくださいもう一つの宇宙の住人よ お慕い申しております…』
少しの沈黙とため息から遅れて男の声が返ってくる
「悪の組織の交渉代理人をやっているよ だいたいの天使や私はバランサーを務めようとしていてね、それが上手くいくかは分からないけど おかげで空腹にならずにはすんでいるよ。そうね ぼくは第六天使 その名前を覚えてればいずれは大きくなったら君は会えるんじゃないかな?」 大きくなったら、の話をするのは非常に心外で今知りたいのだが、必要がないからと教えるつもりはないというこの面倒くさがりな伽藍洞な男に怒りつつ、ひとまず教えてくれそうなことを聞くことにした 「文通相手が直接くればいいじゃないの、なんであなたが間に入って来たの?」
天使はため息をついた「私が会わせたいわけじゃないよ そう思ってるのは第二十六番目の天使の方」天使が二人?
「彼女はそう、探偵をやっている。ただ探偵という仕事に影響を受けすぎたみたいでね、真実を知る過程について教えたがるんだ ありがた迷惑にもね
全く正反対の人なんだけども 今回君の文通相手含めて意気投合した それはなぜか?」
天使は頭をぐるりと回し、繋いでないほうの手で、頭を掻いてため息をつく。
「あなたのお母さん、オイナさんへの謝礼です。特に私たち三人はあなたのお母さんに助けられたところがあるのです。
他の二人の理由は知りませんが、ぼくはすぐ近くに日本国があることが非常に安心しますね 日本語しか読めないのに文書は基本的に英語やロシア語、どんなに勉強しても言葉は言えても文字では頭の中でモヤがかかって見えない。あなたの母は日本国をお創りなさったのですから、感謝しきれてもしきれないものがあるでしょう」天使にはそういう事情もあるのかと、私はその時初めて考えた。
日本語しか読めないことがどれだけ辛いかなんて考えたことがないし、母が彼らを救ったことと結びつくとは、そしてこの件は母への謝礼ではなくて私は無関係であることに少し腹を立て我慢できずに少し拗ねた
「でしたら母の葬式に参加すればよろしいじゃないですか 27人全員で参加すればいいのに」 別に正しいと思っていたことではないから、そういうものではないと改めて分かるのは また男のため息でわかった。
「えぇ、27人全員揃うこと自体難しいですが全員が感謝してるわけでもございません。
あなたの母上と方針として敵対してるものもいます、それはイデオロギーだったり利害だったり表面上だったり、まあ知ってるでしょう?アイルランド国王やシベリア鉄道局員、もちろん状況によれば私たち含め27人全員は集まってしまえば」男は手をこちらに寄せ、引っ張り 私と男の目線があう その冷たい目からそらそうとするつかの間、 男の手の中に収まり 私の腰は反って男の手がなければ倒れてしまう体勢となる そして耳元で小さく私に向けてこういった「あなたや世界に対して敵対します ですので3人でこっそり来たのです。」
私は男を押し返し、少し先へと逃げる、怖く泣きそうだったが、男が伽藍洞な顔の代わりに少し笑顔を見せて申し訳なさそうに 大丈夫ですか? そう言って手を差し伸ばしたので、許して手を受け取った。「あなたの母にも是非会いたかったですがね、イオラニ島で匿われている以上、こうした緊急時にあなたを連れ出す他なかったのです。」
わかった。そう頷いたのもつかの間、男の足取りが止まる 私は上を見上げて確信する ここには一度来た気がする、そしてこの古びた教会で私は文通相手と会うのだと
ここには何も匂いがしない 歩いて扉を開かなければ何も分からないのだろう。
男は留まり私が扉を開くのを待っている。
だから、私は扉を開いた。
赤と青のカーテンが下ろされた一つの壁画が目の前に現れた その瞬間 女性の快活な 奇妙な調律のピアノのように半音高く そして極端で出来た体型の細い声 女の子の風が通った
「なにごとも正しいことのために!」戦争映画のスナイパーが、そう神に対して祈りを述べて撃つように 音声の風が通った後には 夢の中なのに鉛玉が私の頬を掠った痕ができて痛かった
「イライジャ!暴力はいけません!」
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