PART1 その5


「どうしましたか?」

 この神父は世界を憂いていたが、その憂いをいつも保てているから普遍神を奉るのか?それとも神に対する疑いではなく、人類同士の利権争いへの厭世なのだろうか?少なくとも彼は私のようにこの世界に満足してないと思い、少し油断して話しかけた。

「どうも、ソフィア・リティヤレスカ・チェルノゼノーヴナと申します」

 私が膝をつき、形式的な礼儀をなそうとすると、神父は慌てて手のひらを垂直に押し出した。 私は彼のこの行動がこの先ずっと気にしている。

「いえ、そういう儀礼的なものをしなくてもよいですよ、ソフィアさん。レグザと申します」そうした挙動が彼らの聖書にも一行ありそうで笑いそうになるのをこらえて、まず頭に浮かんだことを聞くことにした

「画家について 画家についてもっと考えたいのですよ。 二ホン人なのですか?彼女は何故ここへと逃げてきたのですか?彼女はいったい誰なのですか?」神父は少しこの時困っていたと思う「だれ、ですか。おそらく天使でしょう。お連れの方のいう通りに、二十七番目の天使本人です。」知っていることにと思いつつも私はまだ聞きたいことがあるために、知らないふりをして続ける、もちろんそれが困らせていることには気づいているのだがやめることはできなかった「彼女を捕まえたい人は月人でもドイツ人でもギルドの人間であっても同じです、なぜあなたは本人であることを知ってそのままにしたんですか?......もし信用できないのでしたら、身分証明書でも必要でしょうか?彼女を捕まえたいわけじゃないんです、単純に知りたくて」

「お若い方、何かそういうことをしなくても大丈夫ですよ、単純ですか。深い事情がある様に思えますがまあよいでしょう。最初に彼女が現れたのは1925年の頃です。白鳥号を見に来たから、その前にこの街の皆さんと仲良くなりに来たと」

 わたしは少し頭を悩ませた後、白鳥号について思い当たることがなかったから「白鳥号?」とそう聞いた

「はい、当時流行っていた小型エンジン機による大陸横断の挑戦、1927年に起きた市民を沸かせた事物ですよ。フランスでは白鳥号はここで最後に発見されたらしいです。」

 私はなるほど、と思った。「天使の症状の一つですか、天使は最初の未来を見ることが出来ると。その後も何度かここに?」

「えぇ、私が助祭になった年からは一年の内に何度か遊びに来ていました。世界の一つの場所に私は留まれないから、その中でもエトルタの景色は変わらないから好きだと。

 私も彼女と話したことがあり、そうした中で絵を描くところ見せてもらったことがあります。私の肖像も描いてもらったこともあるので、そういう芸術家なのかなと、時代的に少なくはなかったころですから。」

 それでも、と続けて神父は彼女の違和感のあったところを話し出した。

「第二次世界大戦の最中、彼女はこの街に対して法外な支援をしてくれました。ある愛されたユダヤ人の老夫婦には 南米行きの旅券と資金を用意したり、公安らしき人物と話しているのを見かける人もありました。この国は第二次世界大戦の最初は内戦で、世界大戦なんていざ知らずという感じでしたが、アナキストとブラジル傭兵の戦いでここも戦場になりましたね。風変わりな芸術家は心を痛めたようで一晩この街の再建方法とそのお金の引き出し方について教えてくれました、おかげでそこそこ大きな街になりましたね。

 そう、もちろん彼女は最初現れた少女の姿から20年間姿かたちを変えることなかったのですから、この街の人びとは薄々、魔女か天使かそれとも悪魔かはわかりませんが、人間ではないとは思っていたでしょう。ただ誰もそのことを口にしないだけで。」

 神父の長い説明に私はひとまずここで聴くことをやめないといけないと思った。

「分かりました。ありがとうございます、そうか・・・・」

 私はもう照らされていない絵画へと視線を向けた。

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