第3話 護、侵入者と真弓のセックスを見ることを強要される

 部屋のロックが自動解除される音がしたかと思うと、いきなりドアが乱暴に押し開けられて、大柄な男が侵入して来た。


 [第2話から続く]




 言わんこっちゃない。


 きちんと背広にネクタイまで締めているが、9月終わりとは言え、まだこんなに暑いのに頭には毛糸の目だし帽を被っている。


 明らかに強盗スタイルなのだが、動きは敏捷さを欠き、迫力も乏しい。


 男は後ろ手にドアを閉めて、目だし帽の中から裸の真弓を眺めた。


 真弓は背を丸め、右腕で乳房を守り、左手でたったいま形を整えたアンダーヘアを隠している。


 「ははぁ、このお兄さんといいところだったのかね」


 男は護をチラと見て、


 「今から、ヤルところか?それとも1発、ヤッたあとか」


 男はドスを利かせて喋ってはいたが、初めて舞台に立った素人のようなぎこちないセリフ回しと、滑舌の悪さが目立った。


 「そんなんじゃあありません。出て行ってください。警備員を呼びますよ」


 真弓が顔を引きつらせたまま健気に、こちらは真に迫るような気迫で反撃した。


 「呼べるものなら呼んでみろ。アンタ、美咲真弓だろ。若い男をホテルにくわえ込んで、これが世間に知れたらどんな騒ぎになるかわかっているのか。何なら俺が警備員を呼んでやろうか?それとも週刊誌の記者の方がいいかね?」


 男がまたまるで台本を読むような一本調子で言ってベッドまで行き、不思議なことに背広の上着を脱いだ。


 侵入して来た時には気づかなかったが、護にはこの男が大柄というよりは中年太りよりもう少し年齢が上の、殆ど老人の貫禄をつけた男のように見えた。


 着ているものは高級そうで〈ゆすり物盗り〉の類ではないようだが、侵入の目的がわからない。


 もしかしたらこんな年齢になっても熱心な真弓の追っかけファンなのかもしれないが、見たところ、武器は持っていない。


 力では負けないと思ったので護は気が楽になって、また美咲真弓の前だからこそいいカッコもしたくなって、


 「アンタ、一体何しに来たんだ?」

 と両手に拳を作って、相手になるぜ、というようにファィティングポーズを取った。


 「歯向かうつもりなら、よした方がいい」


 男は目だし帽の奥の目で不敵に笑い、ギャング映画に出てくるマフィアの三下がよくやるように、ズボンの後ろ腰部分のベルトに挟んだ黒光りするものを掴み出した。


 それが拳銃だと知って、


 ヒャー!


 と、真弓が喉の奥の方で声を絞り上げた。

 恐怖のあまり悲鳴にならず、風船の空気が抜けるような声が真弓の口から漏れた。


 護は黒光りするものが自分に向けられているというよりは、真弓の肺から漏れ出るその声の方に危機が迫っていることを実感して、戦慄した。


 銃を持っていると知っていれば、さっきのような愚行には出なかったのに、と、もう後悔していた。


 「アンちゃん、こっちへ来い」


 と、男は護に罰でも与えるつもりか、拳銃の先をしゃくった。


 何だかプラスティックで出来たオモチャの銃のように見えなくもないが、元々本物の銃なぞ見たことがない護には、もう抵抗する気は失せていた。


 3Dスリーディプリンターで素人が作った樹脂製の銃かもしれないが、


 試射成功の例もあると聞くので、

 頭を撃たれたら痛いだろうな、

 それより前に暴発してこの男の手首が吹っ飛ぶかもしれないぞ、


 などと考えながら目を伏せて命じられるままにベッドの方へ行くと、

 男が今度はズボンのポケットから手錠を取り出して、

 護の方に投げて、


 「そのベッドの脚に腕を回して、手錠をかけろ」

 と、言った。


 護は言われた通りにした。


 いかにも100均で買ったようなチャチな手錠だったが、恐ろしさが先に立ったのと、いくら強盗でも警察官ではないのだから本物の手錠は持っていないだろうと、100均か無印良品手錠も納得した。


 「お若いの、本当にこの女とは何もなかったんだろうな」


 と男はもう1度念を押すように、もうひとつドスを利かせて護に迫った。


 「あるわけないじゃない」

 驚いたことに真弓がため口で答えて、


 「この人、ヘアスタイリストなの」


 「ヘアスタイリスト?そんなこと言ったって、髪をいらった様子はないじゃないか」


 「いやねぇ。ヘアはヘアでも、こっちのヘアのこと。カットして貰ったの」


 真弓は全裸のまま腰に両手を当てて、ヌードモデルがよくやるように下半身を突き出すポーズを作った。


 「チン毛をカットした?どうれ、見せてみろ」


 「嫌よ、恥ずかしいじゃない」


 「いいから見せろ。こっちへ来い」


 男は拳銃をしゃくって真弓をベッドまで呼ぶと、彼女の背中を押してベッドに転がした。


 またまた不思議なことに真弓は俯せに倒れたはずなのに、ベッドの上でクルリと体を反転させて、自らが仰向けになった。


 そして命令もされないうちから脚を開いた。


 「ほほう・・・なるほどな」


 男が毛糸の目出し帽の口元に、イヤらしい笑みを浮かべた。


 「やめてよぅ、恥ずかしいじゃない」

 自分から脚を開いたくせに、真弓が文句をつけて脚を閉じた。


 「もっと見せろ。いいから、もっと脚を開け」

 男は拳銃の銃口を真弓のアンダーヘアに突きつけた。


 今度は仕方なくといったカンジで、真弓は脚を開き始めた。


 「確かにな。ヘアの格好は前よりいいな」


 男は言いながら、目出し帽の口を真弓の陰毛に近づけて、舐め始めた。


 「ひげ剃りあとのような匂いがするな。それにオマンコの味も前とは違うぞ」


 「だから言ったでしょ。ヘアをカットしてもらったって。シャンプーして化粧水もつけてもらったからひげ剃りあとのような香りがするのよ。それと化粧水がヴァギナに染み込んでいるから、アルコール分が少々」


 護は2人の会話を聞きながら、

 前よりいい?

 前とは味が違う?


 とは、どういう意味だろう?


 とベッドの端の方で頭を屈めながら考えていた。

 侵入時と、明らかに様子が変わっていた。


 「ええい、こんな暑苦しいものは邪魔だ」

 男は毛糸の目だし帽を頭からはぎ取った。


 その時チラと見えた横顔は、60歳をとっくに過ぎたような白髪混じりの紳士だった。


 目だし帽を脱いだ時に髪が乱れていたが、きちんと櫛を入れれば大物政治家か、どこかの大企業の代表取締役社長といった貫禄がある。


 そういえばテレビのニュースか何かで見たことのあるような顔だと、護は記憶をたぐっていた。


 護が男の顔を思い出そうとしていた時に、その男は荒い息を吐きながらズボンのベルトをゆるめていた。


 そしていかにも昭和中期の男らしくズボンとステテコとパンツを順番に脱ぎ捨てて、下半身裸になってからベッドへあがり、真弓の上に跨った。


 「くわえろ」


 「いやです」


 くわえろよ、と男は拳銃を突きつけた。


 護は彼らの足もとの方から頭だけ上げて、それを眺めていた。


 明らかに真弓を犯しているのだが、やっていることはまるで凶暴さを欠いていて、こんな強姦の仕方もあるのだな、と思いながら、早く済ませて出て行って欲しいと、そればかりを願っていた。


 真弓がムグムグ言っているのは、きっと男のペニスをくわえさせられたからに違いないが、男の弛んだ尻が邪魔になって、護には見えない。


 「よっしゃ、ってきたぞ、入れてやる」


 男は真弓の膝を割って強引に挿入した。


 アアン。


 真弓が身悶えしながらすぐに喘いだ。


 いかにも喘ぐのが早かったが、護がさっきツバをつけて湿っていたからか、それか、早く終わって欲しいと演技をしているのだろう、と護はその心中はいかばかりかと察した。


 男が体を動かしながらねっとりと真弓にキスをして、


 「今日のお前の唇の味はフルーティだな」

 と、笑った。


 「今日の?」


 と、護は男の言った言葉の意味も理解することが出来なかったが、もしかしたら寸前まで涎を垂らしながら護のペニスをくわえていたその行為の残り香が、果実のような甘味をともなって真弓の唇に残っていたのかもしれない、とこちらも自分の都合のいいように考えていた。


 男は暫く体を前後に動かして、今度は真弓を裏返しにすると、白いお尻を浮かせて、その隙間からペニスを突っ込んだ。


 ウァウァウァ、


 と真弓がオーバーに喘いだ。


 その喘ぎ声に気分を盛られたように、男がペニスを突き立てる。


 それから暫くして男はまた正常位に戻ると、

 不意に、

 ああああっ、

 と腰砕けのような声を出して真弓のヴァギナからペニスを抜いて、

 真弓の顔の上へもってゆき、

 口に突っ込んだ。


 ウッ、ウッ、ウッ、


 と男が呻いて、体を震わせる。


 真弓はされるままになっていて、男がペニスをもう1度口の奥深く突っ込んだあと体を離すと、ゴクっと真弓の喉が動いた。


 「さあ、お掃除フェラだ」


 男がペニスを真弓の口にもっていったので、こんなことまでやらせていいのか、と護は驚き、他人事ひとごとながら頭にきたが、征服されてしまった真弓はいとも簡単に自らがくわえて、音を立ててしゃぶりはじめた。

 

 そのあと、ベッドの上は静かになって男は大の字に手足を広げた。


 その場は確かに暴力的な行為がたったいま行われたのだが、不思議にささくれだった空気にはなっていなかった。


 パパぁ、

 と真弓が言った。


 「今回の趣向はどうだった?」


 「パパ?」

 護は顔を上げて誰にともなく聞いた。


 男は真弓から離れて仰向けになっていた。


 「私のパパなの。このごろたないっていうから刺激のあるゲームをしてみたの。打ち合わせも台本もないぶっつけ本番だったからビックリしたでしょうけれど、センセ、協力ありがとうね」


 「おお。良かったとも。こんなに興奮したのは久しぶりだ。真弓、本当にこのお若いのとは何もなかったんだろうな?」


 「あるわけないじゃない。パパぁ、妬いているの?だったら嬉しいけれど」


 真弓はそんなことを言いながら体をずりさげて、男の下腹部に顔を埋めた。


 そして萎えたペニスをしゃぶりながら、

 パパぁ、

 と甘ったれたおねだり声を出した。


 「な、何だい?」


 男が真弓の髪を撫でる手を止めて、何を言い出されるのかと急に渋い顔をした。さっきまで攻める一方だった男の声が、反転逃げ声になっている。


 ということは、これが真弓のおねだりパターンに違いなかった。

 

 パパぁ、と真弓はもう1度猫なで声を出して、


 「もっとオチンチンのお掃除・・・して、欲しい?」


 「おお。して欲しいとも」


 「実は私もお願いがあるんだけどさぁ・・・」


 「何だぃ?言ってみなさい」


 「これ・・・続けて欲しい?」


 「ああ。続けて欲しいとも。一勝負したあとのタレチンをしゃぶってもらうのは最高なんだ。いいから、何でも言ってみなさい」


 「じゃあ、言うわね。私のマンションなんだけど」


 「ママ、マンション?」

 男の声がオクターブ上った。


 「やっぱりダメよねぇ。もう何年か住んで飽きたから、売って新しい所に移りたいのだけれど・・・」


 真弓がペニスから唇を離して、しょんぼりした。


 「いいよ、いいよ。続けて。それでどこかいい所でも心当たりがあるのかね?」


 ホント?


 現金なもので真弓はまたペニスを勢い良くくわえて、


 「港区のタワーマンションがいいわ。なるべく・・・」


 さすがに高価すぎて言い出しづらいのか、高層階が、とペニスをくわえたままモゴモゴ言った。


 「わかった、わかった。来週あたり、時間を見つけて見に行くか」


 男はそう言ったあと、


 「おい、そこのお若いの、帰ってもいいよ」


 [剃りびと パート6 了 パート7へ続く]

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剃りびと 蘭&護(6) 護の1日  護&女優 美咲真弓 押戸谷 瑠溥 @kitajune

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