第2話 護、実咲真弓の美しさに驚く

 [第1話から続く]



 護は目の前でバスタオルを落とした美咲真弓の、一糸纏わぬ裸身の美しさに目を奪われていた。


 ついさっきのカフェでの、あの小便くさい女子のことはもう忘れていた。


 いま旬の女優と言うには少しトウが立っていたが、それでも真弓のヌードを金に換えて儲けようとたくらむ出版社がまだあるだけに、シロウトとはまるで違う美しさだった。


 いつも他人から好奇の目で見られているという感覚が、服地で覆い隠された部分も磨き上げてゆくのか、それか夜毎牛乳風呂か何かに浸かって入念な手入れをしているとしか思えないような、まるで細雪ささめゆきのような肌の白さとみずみずしさである。


 撮影で脱ぎ慣れているのか、これしきのことで、といった感じで真弓が微動だにしないのも、さすがに腹が据わっている。


 護はキャバクラ嬢半分テレビのちょい役半分の、どちらが本業かわからないような女性タレントのアンダーヘアを定期的に整えているが、真弓はやはりそんな軽量級タレントとはモノが違っていた。


 「で、どんな形にしましょうか。ご希望はありますか?」


 普段なら女の方が顔を真っ赤にしてモジモジするのに、護の声の方がかすれていた。


 「先生にお任せするわ」

 真弓は嫣然と微笑した。


 「じゃあもう少しそのままで。本当に美しいですね」


 女は褒めるに限る、とは女に好かれるモテ男の金言であると同時に護の信条でもあったのだが、彼はソファーの背もたれに背をもたせかけて、真正面に立っている真弓の全身を眺めた。


 腕も肩も脚も細くきれいで、下腹部は特に締まって美しかったが、華奢な体に較べてアンダーヘアは濃く、剛毛密林の逆三角形だった。


 日本人の大半がこの形だと言われているが、護のまだ少ない経験からしても、長方形の縦長ヘアと逆三角形ヘアの割合は1対4か、1対5のように思われる。


 概して逆三角形陰毛の人は剛毛密林が多く、そのヘアは性器を包んでアヌスにまで達し、一方縦長ヘアの人は柔らかな毛並みがクリトリスを包んだ陰核包皮いんかくほうひの上で慎ましく止まっていて、むだ毛はあまり見られない。


 遮光カーテンが外の明かりを遮り、二重になったガラス窓が下界の喧噪を遮断して北欧の夕暮れ時のような平和な部屋の中は、悠々たる大河の流れを思わせるゆるやかな時間が流れていた。


 真弓の全身を眺めているうちに、イメージが護の中で固まってきた。


 「こちらへ座ってもらえますか?」


 護はハサミや安全剃刀などの七つ道具を並べたガラステーブルを脇へ押しやって、目の前の高級ソファーに手を流した。


 言われるままにおずおずとソファーに深く腰掛けた真弓は、さっきまでの堂々とした振る舞いがまるで嘘のように硬い表情に変わり、両脚をぴったりと閉じ、両手を膝の上に揃えていた。


 「浅めに腰掛けてくださいますか」

 と、護は声をかけた。


 真弓がソファーの先端にちょこんと腰掛けるようにお尻をずらしたが、まだその姿はロダンの〈考える人〉みたいな前屈まえかがみのままだった。


 「背中をソファーの背もたれにもたせかけて、リラックスしましょう」

 護が言うと、それにも真弓は素直に従い、胸を開いた。


 「じゃあ脚を開いてくださいますか」


 護の言葉に、


 えっ!


 と、そのとき真弓は初めてたじろいだ。


 「だってそのままでは仕事が出来ないです」


 「だって・・・」

 真弓は唇を噛んでうつむいた。


 大抵の女がそうなる。

 すべてをさらす覚悟で来てはいるものの、やはり初対面の男の前で堂々と脚を開く女なぞ、そうそういるものではなかった。


 一見いちげんさんだろうが誰だろうが、どんなジジイでも醜男でも相手がヤクザでも、その体ひとつで奉仕を続けるソープ嬢でさえ、いざこんな時になると躊躇するのが常だった。


 美咲さん、と護はいつも客にそうするように、静かに話しかけた。


 「美咲さんがプライベートでヘアカットをするというよりは、美咲真弓という女優さんがその役を演じていると考えたらいかがでしょうか」


 「え、ええ。そ、そうね」

 護の説得を理由にしたかのように、真弓は口を真一文字に結んで、脚を開いた。


 黒々としたヘアの中に、湿り気を帯びた2枚の花弁があった。


 淫水焼けなのか、経産婦のように発達した小陰唇の花びらは黒ずみ、頂点のクリトリスはすでにつぼみの先端を覗かせて赤く充血している。


 それが恥じらいからきた精神的昂揚なのか、或いは見られていることで感じる性的興奮か、または単にシャワーの湯で温められてそうなっているのかは、わからない。


 護は〈超小型充電式〉掌サイズのドライヤーを手に取り、スイッチを入れた。


 モーターがかすかに唸ったかと思うと、それを〈撮影スタート〉のカチンコ代わりにでもしたかのように真弓の体がしゃんとして、1本、筋が通った。


 監督が言うならどんなことでもするわよ、という女優魂が体全体に1本の線のように瞬時に浮き出て、護はプロの女優さんの気迫に圧倒された。


 少し気後きおくれしながらドライヤーの温風を、真弓の陰毛に当てる。


 指でそっとヘアをくように乾燥させると、


 ああ、


 と真弓が目を閉じてくぐもった声をあげて、


 「先生がイケメンだから恥ずかしいわ」


 「オヤジの方が良かったですか?」


 「そりゃあ先生の方がいいに決まっているわよ。写真家にしてもファッションデザイナーにしても、オヤジアーティストはスケベなのよ」


 「そうですか。若ければスケベでもいいのですか?」


 「そういう訳ではないのだけれど、若い人って、元々性欲が溢れているからH気分になるのは仕方ないでしょ。でもオヤジのスケベは、見ていてなんか、見苦しいってカンジなのよね」


 「そうですか。良かったです。美咲さん、肌もスタイルもぼくが今まで見てきた女性の中では1番に綺麗です。でも、ちょっとアンバランスかな」


 えっ?


 真弓は閉じていた目を開けて、不安げな表情を浮かべた。


 アンバランスと言われたことが、自分の裸体という商品に何かの瑕疵でも見つかったかのような、不安な目になっている。


 二十歳はたちの頃のピチピチお肌に較べれば、潤いも張りも落ちたという焦燥は真弓自身持っていたが、それより他の、消しても消えないシミのようなものか、伸ばしても引っ張っても薄くならない皺のようなものが、体に浮き出てきたのではないかと。


 「今まで多くの女性を見てきましたけれど、美咲さんの美しさは別格です。でもここのヘアは毛量も少し多いようです。短くしてきましょう。それから美咲さんの体型に逆三角形ヘアは似合いません。細めの長方形にしましょう。ただ、はっきりと形を整えたとわかるのは不自然だから、極力自然のままだと思わせるように」


 「ええ。先生にお任せするわ」

 護がヘアを撫でながら言ったので、もう状況に慣れてしまった真弓は腰を突き出した。


 護は小型電池式〈LEDスポットライト〉をガラステーブルの上に立てて、真弓の性器を照らした。


 それだけで真弓はああっ、とまた唇を半開きにした。


 これで真弓の意識が体から完全に分離した。

 それはもしかしたら婦人科で、診察椅子にすわった妊婦のお腹の上にカーテンをおろす作業に似ているのかもしれない。


 いかに医師と言えどもカーテンをしないまま性器の中に指を入れたら患者は不審を抱くが、カーテンという間仕切り1枚あるだけで、器具を入れられようが指を入れられようが、またたとえ陰唇を撫でられようが子宮内を引っかき回されようが、診察上の行為と言われれば、クレームの付けようがないのである。


 ことに初産の女性であれば、診察とはこんなものかと思ってしまう。


 真弓の小陰唇の2枚の花びらがピクピクと、まるで生き物のように呼吸している。

 その半閉じというか、半開きになった花びらの間から、すでに透明の粘液が滲んでいる。


 護はそれを観察しながらドライヤーをハサミに持ち替えて、真弓のヘアを根本から左手の人差し指と中指の爪先で軽く挟み、爪の上にハミ出た部分をカットする。


 チョキチョキチョキというハサミの軽い音だけが、閉ざされた密室の中で断続的に響いている。他にはカントリーミュージックの乾いた音楽と、真弓の吐く、湿った息。


 ヘアの上面うわつらをカットし終えると、逆三角形の底辺部の角に護はハサミを当てた。


 両角を落として、野球の縦長ホームベース板状に仕上げてから、指2本分の3センチ幅に整えてゆく。


 それからクリトリス近くまで生えているヘアのカットに移る。


 「ちょっと失礼」


 ひと言断って真弓のクリトリス付近を左手の中指で軽く押さえると、


 ウゥン!


 と彼女は声をあげた。


 真弓が呼吸をするたびに、ヘアの刈り取られた下腹部があやしく動き、護はクリトリスにハサミが当たらないように、また花びらを傷つけないように指を置きかえては、そこに生えたむだ毛を1本1本、丁寧にカットしてゆく。


 それが済むと、超小型掃除機を手にして、スイッチを入れる。


 ブーンとモーターの回る機械的な音がして、護はその小さな吸入口を真弓の陰毛に当てる。


 それから小陰唇のビラビラに当てて、カットしたヘアを吸い取ってゆく。時々反対の吹出口ふきだしぐちの風を、開いている小陰唇の中心部に当てて、


 ウッ、


 と、真弓が呻く様子をひそかに楽しむ。


 護のペニスはもうパンツの中で勃起状態である。

 勃起しているのが知れるとやはりマズイので、きつきつの下着で締めてジーンズの上からではわからないようにしている。


 それからシェービングクリームの泡を左掌ひだりてに吹き付け、今度は右の人差し指の腹で掬って、カットしたヘアの部分に塗り込む。


 そしてT字型の安全剃刀を持ち、剃り上げてゆく。


 真弓の脚をこれ以上ないほど開かせて、花びらをつまみ上げ、その近辺やクリトリスのすぐ上の皮膚をマッサージするように丹念に伸ばしながら、剃り続ける。


 花びらを開くと、ヴァギナや尿道口まで全て見える。


 もう透明の液体が涎のように溢れている。


 安全剃刀の刃が花びらをそっと撫で上げる度に真弓は身悶えし、開いた花びらの奥から粘液を滴らせた。


 「四つん這いになって、お尻を上げてもらえますか」


 護が言うと、真弓はもう命じられるままに体を裏返しにしてソファーに上体を預け、形のいいお尻を上げる。


 犬が背伸びするような格好は、恋人には見せても、美人女優が今まで他人に見せたこともない禁断のポーズであるに違いない。


 贅肉の全くない平べったい腹部もそうだが、そのぺったんこの腹部とお尻の作る丸いラインは絵を見るような芸術的な美しさである。


 護はアヌス周りから、男で言えば陰嚢とアヌスのちょうど中間辺りの〈蟻の門渡とわたり〉と呼ばれる箇所に、まるでマッサージでもするように直接指でシェービングクリームを塗り込み、それからむだ毛を剃ってゆく。


 そして最後にコットン紙に化粧水を染み込ませて、アヌス周りと性器全体をきれいにする。その上で濡れタオルで丹念に拭いて、ドライヤーで乾かして終わりだった。


 「美咲さん。終わりました」


 護が言うと、真弓はトロンとした視線を自分のアンダーヘアへ落とし、夢遊病者のようにゆっくりと立ち上がった。


 それから大きなドレッサーの前に立つと、

 「まあ。さっぱりしたわ。自分のじゃないみたい」


 「とてもきれいですよ」


 「先生」


 真弓は焦点の外れた目で護を見て、そばへ近づいた。


 そのとき視線をちょっとだけ上にあげて、壁の時計を見上げた。


 「時間が気になるのですか?」


 「ええ。新しく始まるドラマの打ち合わせが、このあとあるの」


 「わかりました。それではすぐに終わりますから、少し手直しをさせてください」


 護は遠目に真弓の全身を眺めて、いま整えた陰毛に2箇所ほどハサミを入れた。そのたびに掃除機の吸入口を当てる。


 「いえ、いいの。センセ、私、変になっちゃった。どうにかして」


 「そう言われても」


 「思い切りエッチなこと、して欲しいの。だってセンセにこれだけオマンコをイジリ回されたのよ。火をつけたのはセンセなのだから、責任を取ってくれなくちゃ」


 客の方から懇願されれば護も拒まない。


 ましてや目の前で脚を広げているのはあの美人人気女優、美咲真弓である。と言うよりも、さっきからペニスは勃起状態だった。


 護は頷いて彼女をソファーに座らせた。


 女の脚を両手で大きく開き、花びらの割れ目に口を近づけて舌で突つこうとした時、不意に真弓が脚を閉じて護の頭を挟み込み、いきなり正気に戻ったような目でこう聞いた。


 「センセ、イケメンだから、こういうのってしょっちゅうでしょ?」


 「いえ。初めてです。ぼくは普通お客さんとは絶対にこうはならないのです」


 「合格よ。口は固くなければね。今の言葉を忘れないでね」


 真弓は指で護の唇を撫でながら笑い、それから脚を開いた。


 ゴーサインが出るとすぐさま護は舌先で真弓の中心部をひと掬いして、チュ、チュ、とわざと派手な音を立てて吸い、何度も舌で割れ目をつく。


 花びらの1枚ずつを口に含んで舐め回し、挿入した指の腹で子宮の天井をまさぐりながらクリトリスの芽を舐める。


 「ああああっ」

 と、真弓は大きな声をあげて脚を硬直させた。


 テレビでしか見たことがなかったあの女優さんが、こんなに喘いでいる、と護も興奮する。


 「今度は私の番よ。お願い、センセのオチンポをくわえさせて」


 真弓は護の頭を1度抱きしめてから、体を入れ替えて護をソファーに座らせ、ベルトを外し、ジーンズとパンツを同時におろすのももどかしげに跳ね上がったペニスを、いきなりくわえた。


 蛇の舌のように真弓の舌がペニスに巻きついてくる。


 細い指先で睾丸を揉みしだきながら口腔の内壁でしっかりとペニスを包み込み、唇から涎を垂らしながら激しいピストン運動が続く。


 「上手ですねぇ」


 護は今まで受けたことのないような天才的なフェラチオに、射精しそうになった。


 口の中が3段に分かれていて、その各段で締め付けたり舐めあげたりするのは多分無意識の口内の動きだろう。


 「褒められると嬉しいから、どんどんやっちゃうの」


 真弓が潤んだような妖しい目を上げて護を見た時、

 不意にドアのノックの音がして、

 2人は固まった。


 真弓はペニスから唇を離してドアの方を見て、護は護で現場を覗き見られたような気がして、慌ててジーンズとパンツを引きあげた。


 「お客様に花束が届いておりますが」


 と、ドアの外で声がする。


 真弓は裸のままドアのそばへ行き、

 「そこに置いて下さる?」


 「直接の手渡しを仰せつかりましたので、そういうわけには参りませんが」


 「わかりました」


 驚いたことに真弓が全裸のままドアを開けようとしたので、護は思わず声をあげた。


 大丈夫よ。


 真弓は振り向いて護の顔を見て、声を出さずに口の形だけで言い、ドアノブを回した。


 ロックが自動解除される音がしたかと思うと、いきなりドアが乱暴に押し開けられて、大柄な男が侵入して来た。


 [第3話へ続く]

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