第5話

『≪死霊術≫を発動するのにMPが足りません』


俺は使えそうなスキルだっただけに落胆した。


「まあ、元気出してくださいよー。レベルアップだけじゃなくて、経験値をポイントに変換してステータスも強化できますし、強くなりそうな可能性が見えただけでもいいじゃないですか!」

「たしかに……今までよりはましか」


当面の目的ができたのはいいことだ。

成長してMPを鍛えよう。


「じゃあ、この調子でオーク狩り続行ですね!」

「ああ。すまないが、また頼むよ」

「もちろんです!」


柚月はわんこモードになって駆けだした。

俺は必死でついていく。


二匹目のオークを見つけ、さっきと同じ手順でなんなく討伐した。

柚月もステータスがあがり、より素早い身のこなし、攻撃には鋭さをましていた。


『オークを討伐しました。200EXPを取得します。』

『終末の司祭者 Lv.3 → 終末の司祭者 Lv.4に上がりました。』


「お、MPがあがった。だけどまだ、≪死霊術≫は使えなさそうだ……」

「いいですね! この調子でどんどん強くなってください! シナリオをクリアすれば使えそうじゃないですか?」


この調子で3匹目も倒そうと思ったが、日が沈みだした。


「わーすごいリアルですねー。現実と同じ時間で日が沈むらしいですよ」

「もう、そんなに時間がたったのか……あっという間だったな」

「どうしましょう? 夜はモンスターの行動パターンが変わったりあるかもですよ。最後の一匹は明日にしましょうか?」

「そうだな。ポイントの割り振りとかしたいし明日にしよう」


俺たちは最低限の警備体制を整えて簡易的な寝床を作り、リミナルの初めての夜に備えた。


なんとか1日は生き残ったが、先が思いやられるな……。

柚月と協力できなかったらどうなったことやら。

早く成長しないとな。


「わん!」


わんこモードになった柚月の鳴き声は、励ましてくれてる気がした。

危険に素早く対処できるように犬化して見張ってくれている。


俺たちは交代で寝るようにした。

まずは俺が寝る番なのだが、なかなか寝付くことはできない。


なんども自分のステータスを確認していた。


「≪神託≫……本当に使い道はないのか?」


俺は念のためにスキルを何回も発動してみる。


『お兄ちゃん朝だよ!』

『次のテストで100点とったらご褒美上げる』

『先輩! またこんなところで寝ちゃったんですか?』


うーん……やっぱり使い道はなさそう?

諦めかけた瞬間――


『熟練度が上昇しました』


ステータスを確認すると、


オラクルスキル:「神託」熟練度 1%


ん? 熟練度なんて項目なかったはずだが……。

100%になるとなにかあるのか?


やりこみ要素は嫌いじゃない。

俺は寝るどころじゃなくなった。


◇◇◇


――柚月視点


「……わふぅ」


『あはーん♡ あなたも好きねー』

『ざぁこ♡ ざぁこ♡』

『こんなことで興奮しちゃうの? 気持ち悪い』


なんなんだあの人は⁉

人が見はってる間に寝ずにいかがわしい音声をリピートしている⁉


全然警戒に集中できないよ!

……やっぱり仲間にする人間違えちゃったかな?

いや! そんなことない!

私は仲間を無下にしたりしない!


きっと緊張してて眠れないんだ。

受け入れてあげよう。


◇◇◇


俺は見張りの交代をしていた。


朝がきた。

ワンコモードの柚月を起こしにいく。


「わふぅ……」

「ふふ。朝に弱いのか」


俺は≪祈祷≫で柚月の呪いを解除する。


「……おはようございます。おにぃ様、ごきげんな朝でございまする」

「は? お、おはよう」


なんだか変な口調になっていたが、きっと緊張であまり寝れなかったんだろう。


死んだらリタイアの状況で前線、いや、ほぼ一人で戦ってもらってたからな。

早く俺も力になりたい。


「……昨夜はお楽しみでしたね?」

「ん? なんのこと?」

「いいんですよ。仕方のないことです」


まだ寝ぼけているのか?


柚月は言い残すと、再び二度寝を始めた。


まあ、時間に余裕はある。

ゆっくり寝てもらうことにした。


――それに、あともう少しで≪神託≫の熟練度が100%になる。

俺の気の抜けた口調との闘いはまだ続く。


◇◇◇


昼過ぎ。

柚月はようやく起きた。


「いやー昼過ぎまで寝れるなんて最高ですね! 社会人になって初めてです!」

「え⁉ 社会人なのか? てっきり女子大生とかだと思ってた……」

「えー! またまたっ! おだてたってなにも出ないですよー♡ 私もう立派な25歳ですっ」


言動が幼いからか。

いや、愛らしいルックスから幼い印象を受けていた。


「ブラック勤務だったのでやめれて清々しました!

私の安寧のためにも脱落するわけにはいかないのです……」

「お、おう」


柚月からは今までに感じたことのない気迫を感じた。

そうとう嫌だったんだな。今までの仕事。


「さ! 目も覚めたし、ちゃっちゃとシナリオクリアしちゃいましょうか!」


柚月はわんこモードになり、ご機嫌に荒野を駆ける。


◇◇◇


「わん!」

「どうした?」


緊急時の合図だ。

柚月は俺のズボンの裾を引っ張る。

俺は解呪した。


「オークの気配は感じました!……でも、今までとは何か違う気がするんです」


俺たちはとりあえず、物陰に隠れた。

次第に強い獣臭。

いままでのオークより濃い。


そして目の前には倍近く大きいオークが現れた。


『緊急シナリオ発注』


アラート通知がきた。


『二匹のオークの怨念が宿り、オーク・リベンジャーへ進化を遂げました』

『メインシナリオ「3匹の大豚」はメインシナリオ「2匹の大豚と1匹の超大豚」に改編されました』

『オーク・リベンジャーを討伐してください』


「わ! わ、わわー! どうします? どうします?」


俺はゆっくりと歩みをすすめた。

オーク・リベンジャーのもとへ。


「晃さん! 危ないですよ!」

「たぶん。大丈夫だ。ここは俺に任せてくれないか?」


≪神託≫の熟練度は100%に達成した。

俺の新しいスキルを試すのにちょうどいい相手だ。


――やっと俺の戦いが始まる。

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