第4話

「プレイヤー名 城崎 柚月のメインシナリオ『3匹の大豚』が共有されました」


通知を閉じるや、柚月に確認した。


「メインシナリオの共有? これはなんだ?」

「ふっふっふー! これは私のオラクルスキルの能力です!

シナリオを進めると莫大な経験値が入るんですけど、普通はシナリオ保持者にしか入りません。

ですが! 私の≪協調≫により同意したプレイヤーにも同じだけ経験値が入るみたいです!

寄生大歓迎でーす!」


なるほど。

柚月のシナリオに参加すると俺にも経験値が入るのか。


「オラクルスキルって何? 俺にもあるんだけど」

「知らないんですか⁉ オラクルプレイヤーの特典スキルですよ!

とんでもないスキルをもったプレイヤーが多くて空気になりがちですけど……

そういえば晃さんの≪神託≫ってどんなスキルですか?」


俺はまだ確認できてなかった。

説明文をタッチする。


—— 神託 ——

なんと! 美少女AIのオラクルちゃんが待望のボイス化!

妹ボイス、メイドボイスなど多種多様なシチュエーションをご用意!

これで四六時中オラクルちゃんの声が聴けるね。


目をこする。

見間違いか?

なんど見てもふざけたことが書いてある。


「な、なにか隠し効果とかあるかもしれませんよ……発動してみたらどうです?」


俺は無言でうなずく。


頼む、嘘であってくれ!


『やっほー! オラクルちゃんだよー!』

『お、お兄ちゃん見ないで!』

『おかえりなさいませ! ご主人様!』


俺は無言で地面を殴りつける。


「げ、元気出してください! これは……その……可愛いですよね! 元気もらえます」

「なあ? やっぱ俺みたいなお荷物と組まないほうが……」

「わー! それ以上はダメです! ……私も決心が鈍ります。

もう私たちは仲間なんです。絶対に強くなってもらいます!

それにオラクルスキルだって派生があるものもあります。のちにとんでもないものに化けるかもですよ!」


さすがに詰みすぎだ。

現状が弱すぎるだけに、将来も期待できない。

仲間との協力プレイは連携が醍醐味なのだが、

俺は足を引っ張るだけなんじゃないかと不安に駆られる。


「そんな気落ちしないでください! 経験値稼いでみてからでも、へこむのは遅くないですよ」

「それもそうか」


彼女の明るさには助けられた。

考えるのは行動した後でも問題ない。

まずはデータが欲しい。


「それじゃあ、早速シナリオやりますか!」


柚月は遠足のようにはしゃぎ、率先して道を歩く。


やっぱり、犬の時とあまり変わらないな。


◇◇◇


「3匹の大豚」

――オーク3頭の討伐


柚月は討伐対象のオークを探すため、

≪嗅覚≫スキルが犬の状態の方が強いらしく、

わんこモードで探索中だ。


任意で犬の状態になれるらしいが、

呪い状態を自力で解除することはできず、

一方通行となっている。


ただ、俺の≪祈祷≫のおかけで場面で使い分けができるってわけだ。


「わん! わん!」

「ん? 見つけたのか?」


犬になった柚月は俺の周りを駆け回りだした。

これは事前に考えたオーク発見の合図だ。

俺の周りを駆け始めたら戦闘準備、俺は物陰に隠れる。

隙を見て祈祷で回復、呪いを解除して畳みかける手順だ。


わんこモードだと言葉で意思疎通できないのが難点だな。

臨機応変な対応が難しい。


俺は近くにあった岩場に隠れて柚月を見守る。


本当にやばかったら、体を張って時間を稼ぐくらいならできるかな。

そんなことを考えていると、強い獣の匂いが漂う。


二足歩行の大豚。

――オークが一匹。


2メートル近い体躯に醜悪な顔。大きな棍棒を手にしていた。

人と獣が混在する面はグロテスクに感じた。

子犬の柚月と相まって、サイズ感に少し圧倒された。


柚月……本当に一人で大丈夫か?


「わん!」


心配をよそに、柚月はオークの大ぶりな一撃を危うげなく回避した。

そしてひっかく。またかわす。

傷は浅いが、徐々にダメージが蓄積されていく。


柚月のやつ、やるじゃないか。俺の出番はなさそうだな。


オークは次第に片膝をつくまでに弱っていく。

だが、走りまわっていた柚月も疲れが見える。


そろそろ出番か。

――≪祈祷≫スキル発動。


俺はスキルの範囲内に柚月が入るように駆けだした。

柚月は光に包まれる。


「ナイスタイミング! そろそろ決めちゃいますよー!

――≪爪撃≫発動!」


柚月の爪はより鋭利に。

オークの眼球をえぐりぬく。


「うぇええ、グロ! 思ったより私強すぎましたね」


悶え、倒れこむオークの首筋に爪を切り刻む。

大量の出血。

オークは息絶えた。


すると、通知が来た。


『オークを討伐しました。200EXPを取得します。』

『終末の司祭者 Lv.1 → 終末の司祭者 Lv.3に上がりました。』

『スキル:死霊術を取得しました。』


あっけない勝利だった。


「やるじゃないか。見ているだけだったぞ」

「そんなことないですよ! 回復のタイミングばっちりでした! どうです? 私たち最強のコンビですよ」

「ああ。そうかもな」


胸を張り満面な笑みを浮かべる柚月に、思わずつられて笑ってしまった。


「レベルアップして≪死霊術≫ってスキルを取得したんだけど、試してみていい?」

「え! 強そう! もちろんです、どうぞどうぞ」


俺はオークの死骸の前に立つ。


≪死霊術≫発動!

……しかし何も起こらなかった。


『≪死霊術≫を発動するのにMPが足りません』


俺は無言で地面を殴りつけた。

何度も。

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