第5話 対決

 

 「うっ、重い……」依玲はうっかり口を滑らせた。隣に立っていた『陳くん』が彼女をちらりと見た。


 「前に出ろ!」

 陳くんともう一人の同期入部の男子部員が前に出た。


 「構えて!」


 「始め!」


 陳くんの向かいの男子部員は勢いよく、彼に素早い面打ちを仕掛けようとした。先輩から教わった、面打ちでは速さが命、速さで勝負する、という言葉を彼は思い出す。あの日の屈辱が忘れられない。


 この日本文学科の奴が、新人なくせに偉ぶって、面打ちの練習中に中断して「面打ちは力任せじゃダメだ、防御する手が痛い」などとほざいたのだ。


 「証明してやる! お前の剣術が! ヘタクソだってことを!」男子部員はさっと竹刀を頭上に抜き上げ、薪割りのような姿勢で陳くんの頭めがけて叩きつけた。


 「胴!」

 パシッ!


 一瞬、場は凍り付いたように静まり返った。


 「勝者! 陳くん!」


 この時、皆の頭の中でやっと状況が理解できた。鮮やかな横一文字の逆襲が炸裂し、瞬時に部員たちの歓声が上がった。入部して一ヶ月も経たない、見るからに弱々しそうな陳くんが、まさか人並み外れた反応を見せ、実戦で最も練習する面打ち以外の技を使う新人が少ないことに驚嘆した。部長は内心の興奮を抑えきれず、平静を装って陳くんに「よくやった」と言った。


 陳くんも興奮した様子で、面の中から口元が隠しきれない。


 「どうしよう、次は私の番だ。」依玲は緊張した。


 陳くんは場から退き、依玲の元へ歩み寄った。

 「OK!」


 依玲の頭がゴンと震えた。拳を握った手が彼女の面を叩き、一対の強い眼差しが彼女を見つめ、まるで励ましているようだった。

  

***

 

 「私、勝てなかった。竹刀が重すぎたの。」依玲は顔を覆い、そうマンマンに言った。

 

 マンマンは腹を抱えて笑い転げた。

 

 

―― これは、作者の個人的な体験です。もし、デジタルワールドに登録できるとしたら、私は絶対に、剣道をスキルとして習得します。

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