第2話 テレパスは誰かをAIに訊いた
この作品の仕掛けは「読点の位置」によってテレパスの主体が変わる、という点にあります。したがって「誰がテレパスか」という問いに対しては、単一の正解を提示するよりも、複数の解釈が成立する構造になっていると考えられます。
考えられる解釈
- 女がテレパス説
- 「ちんこ、かいいな」=主人公の心の声を女が読み取っている。
- 女は主人公の内心を察して微笑んでいる、と解釈できる。
- 主人公がテレパス説
- 「ちんこか、いいな」=女の心の声を主人公が読み取っている。
- 主人公は「もしや……」と気づき始めている。
- 両者ともテレパス説
- 双方向に心を読み合っているため、読点の揺らぎがその曖昧さを示している。
- 「静かに笑っていた」という描写は、女がその状況を楽しんでいる証拠とも取れる。
- 第三者(サラリーマン)がテレパス説
- 最後に「毎日うるさいんだよ!」と怒鳴るサラリーマンが、実は心の声を拾っていた。
- つまり、主人公も女もテレパスではなく、サラリーマンこそが真のテレパス。
評者としての見解
構造的に最も面白いのは 「全員がテレパス」 という解釈です。
- 読点の位置によって「女→主人公」「主人公→女」と揺れ動き、最後にサラリーマンまで巻き込まれる。
- つまり「誰がテレパスか?」という問い自体が無限にずれ続ける仕掛けになっており、読者に「結局誰なんだ?」という余韻を残すのが狙いだと考えられます。
私の結論としては、**「テレパスは一人に限定されない。むしろ“全員がテレパスかもしれない”という構造そのものがオチ」**だと読みました。
作者:主人公が妄想でブツブツ独り言を言っているだけの可能性もあると思うのですが。
おっしゃる通り、その解釈はとてもおもしろいです。
この作品の強みは「テレパスは誰か?」という問いを提示しておきながら、実は「誰でもあり得るし、誰でもない」という余白を残している点にあります。
主人公=妄想説
- 主人公が「心の声」だと思っているものは、実は自分の独り言。
- 女が笑っていたのも「怪訝そうに見ていただけ」と解釈できる。
- 最後にサラリーマンが怒鳴るのは「毎日ブツブツ言ってる奴がいて迷惑だ」という現実的なオチ。
→ この場合、テレパス要素は幻想で、作品全体が「妄想オチ」のブラックユーモアになる。
サラリーマン=真のテレパス説
- 読者は「女か主人公か」と思わされるが、最後に「実はサラリーマンが全部聞こえていた」という裏切り。
- 「どっち?」と問いかけておきながら、第三の人物が答えになることで、意外性のあるオチになる。
- この場合、仕掛けとしては「観客の思考をミスリードさせる」構造が際立つ。
評者としての見立て
- 妄想オチは、作品を「SF的な仕掛け」から「人間の滑稽さ」に引き戻す効果があり、ブラックコメディ寄りの味わいになる。
- サラリーマン・オチは、仕掛けをさらにひねって「第三の選択肢」を提示することで、読者に「やられた」と思わせる力が強い。
つまり、どちらも成立しますが、方向性が違います。
- 妄想オチ=人間喜劇的なリアリズム
- サラリーマン・オチ=構造的なギャグの裏切り
私の見解としては、**「サラリーマン=真のテレパス説」**の方が、この作品の「仕掛けの妙」をさらに強調できるので、よりギャグ短編として映えると思います。
- 妄想オチにすればブラックユーモア寄り
- サラリーマン・オチにすれば構造的な裏切りギャグ
- さらに「全員テレパス」説にすれば不条理コメディ
テレパスはどっち? 平蔵 @conradxx
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