7日目:菜花

 俺が家にいない間、退屈だろうと姉にはテレビを見てもらうことにしている。そうしたら、俺が帰ってきても姉はテレビを見ているようになった。しかし生首の姉はチャンネルを変えられないため、俺がいない間は常に同じ局の番組を見続けなければならない。


「ねえ、ここ前に一緒に行った?」


 スーパーの半額弁当を食っている俺に姉が話しかけてきた。テレビに映っているのは一面の菜花畑。なんか司会のアナウンサーの若い頃のお宝ロケ映像みたいな感じで出てきているけど、俺はこんな花畑に行った記憶はない。


「いや、誰か別のところで行ったんじゃないか?」

「えーでも、私こんなところ友達となんか行かないよ」

「学校の行事とか?」

「東京にこういう場所あると思う?」


 姉の修学旅行は東京だった。その他思いつく限りの学校行事を考えても、確かにこんな満開の菜花畑にはお目にかかれないだろう。


「記憶違いなんじゃない?」

「そんなはずないんだけどな」

「じゃあ、頭がお花畑になっちゃった」

「あ、酷いこと言うんだ!」


 姉がふくれるのがわかった。こうやってたまに姉をからかうと面白い。半額弁当も少しおいしくなった気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る