8日目:鏡
姉の首が来てから一週間が経った。相変わらず姉はテレビを見て笑ったり泣いたり、俺の手から菓子やジュースをもらいのほほんと暮らしている。
「ねえ、アレやってよ」
「アレ?」
「パック。もうずっとやってないから」
「よくわかんねえよ」
どうして俺が化粧なんかしてやらないといけないんだ?
「じゃあせめて保湿」
「だからそういう難しいのはダメだって」
「ケチ」
姉が眉をぎゅっとひそめる。十年見ていなかった相手にそういう顔をされると、俺も弱い。
「わかった、その代わり文句言うなよ」
仕方なく、仕事の帰りにスキンケア的な代物を買ってきてみた。汗拭きシートみたいな顔面パックに、乳液とか言う奴。そうして蒸らしたタオルで顔を拭いてから適当にパックを張ってやると、姉は喜んだ。
「えへへ、サンキュ。あー、潤うわ」
「それ、そんなにいいのか?」
「エージ君もやってみなさい」
そうか、そんなにいいのか、これ……俺は鏡の前で顔を洗って、パックシートを貼り付けてみた。ただベタベタするだけで、何がいいのかわからない。
「これでいいのか?」
「ふふ、エージ君かわいい」
姉に笑われてしまった。俺は即座に自分の顔のパックを剥がしてゴミ箱に捨てた。
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