6日目:落下

 仕事から家に帰ってくると、姉の首が机の上になかった。ドキリとして辺りを見渡すと、床の上に転がっていた。


「助けて、エージくん!」


 俺に気がついた姉は必死で救助の声をあげた。ひょいと首を持ち上げて、俺は女王様の席に姉を戻す。俺は留守の間に誰か侵入者があったのではないかとハラハラして、姉に落ちた理由を尋ねた。


「あのね、テレビ見てたらね、面白くて、笑ったら、その拍子でころーんって……」


 くだらない。心配して損した。長時間床に転がっていたせいか、姉の頬はぺったりとしている。


「あ、馬鹿にしたでしょ。私より大きくなったからって、調子に乗って……」

「調子に乗って落ちたのはそっちだろう?」

「……まあ、そうだけど」


 姉はぷうっとむくれてしまった。


「まあ、これでも食えって」


 俺は土産に買ってきたのりしお味のポテトチップスを姉に食べさせる。まるで鳥に餌をやっているみたいだ。鳥を飼ったことはないけれど。のりしおポテチで姉の機嫌は少し直ったようだった。


「ところで、何がそんなに面白かったんだ?」

「面白映像特集で赤ちゃんがひっくり返ったところ」


 姉の笑いのツボ、くだらなさすぎた!


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