4日目:まなざし

 姉の生首を俺は持て余している。タオルだけだと痛くて可哀想だと思った俺は、百均で買ってきたクッションにタオルをぐるぐる巻いて姉の生首に与えた。姉は「へへ、何だか王様になったみたい」などと言っている。満足してくれたようで何よりだ。


「エージ、十年後って何か変わったことあった?」

「SMAPが解散して、こち亀が終わって、世界中で死ぬ風邪が蔓延して東京でオリンピックをやってジャニーズ事務所も解散したよ」

「何それ」


 姉の生首が笑っている。俺の話をまともに聞いていないらしい。


「ついでに今はインフレがすごくて、今はポテチ一袋二百円だ」

「うそ、マジ?」


 姉の目が俺を疑っている。なんだそのまなざしは。俺が嘘つきみたいじゃないか。


「マジだぞ。プリングルスなんかな、あのサイズでもう売ってないんだぞ」


 俺はプリングルスの缶を姉に見せつける。


「カントリーマァムだって、多分十年前の半分の大きさだ。時の流れは残酷なんだよ」

「ふぅん……」


 姉はまだ疑いの目で俺を見ている。テレビやネットを見せたって、偽物って言われそうだしなあ。


「でもさあ……SMAPが解散したって本当?」


 一番気になるのはそこなんかい!

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