3日目:福音
姉の首が家に来て数日経ったわけだが、まだ俺は姉から直接的な話を聞き出せていない。俺の幻覚かもしれないから、まだ他人に相談することもできなかった。
「ねえ、いいことおしえてあげようか?」
「何だよ」
「赤ちゃん出来たの」
「首だけで?」
「えっと……そんな気がしたの」
姉は困惑した声で呟いた。
「でもね、本当にそうだった気がするの。私ママになるんだ~って、そう思ってね。でも、あれ~? 私、どうしたんだったかなあ……?」
俺はまだ、姉が行方不明になってもう十年経っていることを姉の生首に告げられていなかった。もしそういうことに気がついていないとしたら、かえってショックを与えるだけだ。
「思い出したら、教えてくれよ」
「うん、わかった」
俺は姉の話を聞きたくなくて、あまりつけないテレビをつける。ちょうどタレントが飯を食うバラエティをやっていた。
「ねえ、この人こんな年だったっけ?」
「ああ? こんなもんだろう」
「ねえ……もしかして私、未来に来ちゃった?」
「思ったより冷静だな」
姉がいたときより十年後であることを告げると、姉は「やっぱそうか」と軽く言った。
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