第一部一章一話油ギッシュな再会①




◇◇◇◇◇



話しは少し前へ遡る




自称、術者リーンが、

超ポンコツ肥満剣士イルと出会ったのは、

一か月ほど前だったろう…



風の精霊、シルフに導かれ、

この町へやって来た日の事だ。



町の中でも、

一際大きく立派な建物であった

冒険者ギルドは、

活気に満ちていた。


まだ幼さの残る顔つき、

華奢な体躯に旅装束、

銀髪が虹色に反射する美しい髪を

ニつに結び、

琥珀色の瞳、

肌は陶器の様に白い…

神秘的な美少女が

ギルドの門戸を開けると…



若い男衆(冒険者)は

目を輝かせながら騒めき、

仲間であろう女達は

呆れ顔で彼らを肘で小突いていた。



また、壮年の冒険者は若者とは違う

目のギラつきでやはり、

少女の胸元を見ていた。


いや、所謂"そういう"目、ではない

(もし、壮年の者までそうだったら、

肘で小突くどころではなく、

鉄拳が飛んでいただろう)

壮年の冒険者は

彼女の胸元のタグに注目していた。


ギルドの冒険者として

登録する際は必ず、

自身のステータスを刻む

タグプレートを渡され、

そのタグの材質により

冒険者としてのグレードと

信用度が一目で分かる

システムになっている。


銅、銀、金、白金…と

上がっていく階級だが…

壮年の冒険者でさえ、

少女の虹色に輝くタグプレートは

見た事がなかった。



さて、

旅装束の少女がそんな、

雑多な喧騒とは少々異なる、

少女に向けられた騒めきが起きた建物内に

足を踏み込み、

優雅な足取りで室内を進み

ギルド受け付けへ向かおうかと

さらに華奢な足をのばした…

そんな矢先、


もっさりとした

小熊のような影が

ギルド室内で動いた!(置物だと思ってた人もいた筈)


そのフォルムに似合わず

機敏な動きで室内を移動してきた。


そのもっさり感の存在は

どこへ向かうのか?

偶然それを目で追っていた者は

一様に顔を引き攣らせていただろう。


その小熊のようなフォルムの

塊が向かった先…


それは先ほどギルドへ入ったばかりの

かの、美少女の元だった。


その暑苦しい

もっさりとした塊は

少女の目の前へ飛び出し

彼女の視界を遮った。


「え⁈」


少女は驚きに

可憐な小鳥のような小さな声を挙げる。


そんな彼女の戸惑いなど、

お構いなしに

そのもっさりとした人影(どうやら人間らしい)は

軽く屈み、彼女に視線を合わせて言う。


「へい☆そこのカ・ノ・ジョ〜☆

ボキとパーティを組まないかひ?でゅふふゥ」


その現場を目撃していた女冒険者達は、

皆一様に眉間に深い深い皺を作り、

不快感を表示する。


「また現れたよ、あのデブ!」

「ああ…あのブサ新人?」

「最低!またナンパしてるよ!」


女冒険者達の、辛辣な言葉が飛び交う。


誰も異を唱える者はいないようだ。




…無理もない。

旅装束の少女に声を掛けた

そのもっさりとした男は、

およそ冒険者とは思えない程に

贅肉が波を打つ

…超豊満ボディー!


脂ぎった顔には

ニキビ跡が広がっいる、

所謂、生理的に受け付けない系


…であった。




◇◇◇◇◇



(第一話②へ続く)

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