第4話 過去

数代前の愛羅はやんちゃな子供で、親に叱られても好奇心が抑えられない子だった。

ある日初めて海に来た愛羅は、親の目を盗んでテトラポットで遊んでいた。

小学校低学年の頃だろうか。

何をしでかすかわからない年頃、私は愛羅から目を離せずにいた。

「愛羅、そこ危ない。落ちたら大変。」

「平気だって〜。みっちゃん心配性!」

「愛羅、言うこと聞く、いなくなったら親が心配。」

「平気平気〜。」

子供の見守り用兼子供と一緒に育つをコンセプトに作られたアンドロイドの私は、身を挺して子供を守るようにインプットはされているがボキャブラリーはまだまだ多くはなかった。

もっとわかりやすく伝えられるよう言葉がプログラムされていれば、この事故は防げたのだろうか。

「愛羅、」

「も〜みっちゃん危ない言うばっかり、危なくないったら危なくないの!理由言ってくれないとなんで危ないのかわかんなーい」


子供特有の屁理屈だ、わかっているが子供向けの説明、どう伝えることが正解なのか。


「ほら言えない、やっぱり大丈夫なんだって…わぁっ!?」

「愛羅っ!」

私に言葉を投げかけながら、愛羅は足を滑らせて海に落ちていった。


私は迷わず海に飛び込む。

「愛羅、愛羅しっかり。」

幸いにも海岸に上がれる階段が近くにあったため、意識もはっきりしている内に愛羅を両親に預けられた。


私は見守り用のアンドロイド。

機械である以上水に濡れると何処かで乾くまで待機しなければいけない。

万が一発火した時の事を考え愛羅達から離れようと歩き出したところで、か細い声が聞こえた。

「みっちゃん、ごめんね。ありがとう」

その言葉がノイズに溶けていくのを最後に、わたしは闇の中に落ちた。

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