第3話 海辺の再会

水辺が苦手なくせに、何故か君との巡り合わせはいつも海沿いの堤防なんだ。

欠陥品の私に、死に戻りの君の行動パターンを正確に記録する機能はない。

ただ、いつも海の家が始まる頃にお友達と海に来る習慣が変わっていないことを願ってここに立ち寄っていた。


(今日は来ないか…)

諦めて立ち去ろうとした時、

「おー!夕焼けめっちゃ綺麗じゃん!」


愛羅ではない、だが聞き覚えのある快活な声が聞こえた。

思わず振り返り息を飲んだ。


あの子だ。


姿形は変われど私があの子を見間違える筈がない。

ないはずの心臓が脈打つ様な、心が熱くなるような感覚を感じた。

(どうする、声をかける?今までの記録では私を忘れていたことはない。だけど今世は?)

持ち得るデータを分析しながら、気付けば声をかけていた。

「こんにちは。同い年ぐらいの子が見えたから、知ってる子かと思って来ちゃった。」


「…みっちゃんって呼ばれてるんだ」

そう答えた彼女の目が少し悲しげに揺らいだように見えた。


「みっちゃんかー!覚えやすくていいじゃん!私らもそう呼ぶね!この辺に住んでんの?」

言葉を選んでいる内に音羽が話し始めた。


「そうだね。昔からここに住んでて、海でも見て夏を感じたくて」

「わかるー!え、みっちゃん泳ぐの得意?今度風香と泳ぎに行きたいなって思ってて!」

「…私は海は見る専かなぁ。3人は仲良さそうだけど、愛羅ちゃん?は泳がないの?」

「あ、私も見る専で…」

「そうなんだ?もしかしてカナヅチ?」

「ではないんだけど、なんか水に入ると心臓バクバクしちゃって。温泉は大丈夫なんだけどね」

「そうなんだ?」


(その理由が、数代前の記憶ならいいのに。)

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