木星軌道に存在する崑崙コロニー。ここはAIである『皇』によって統治されている。
そして主人公の楊は、蓬莱百貨店外商部の部員である。さてこの外商部、現代日本で想像するものとはちょっと違っているのです。もちろん百貨店ですから、フロアで接客もします。けれど彼らは要望があれば、外へ出て動向を確認することもしばしば。
そんな外商部の部員たる楊のところに、柘榴という少女が現れる。亡き友の妹に会うのはゆうに4年ぶり。ところがどうも柘榴の様子はおかしくて――?
前述の通り、中華とSFを掛け合わせた世界観。けれどこれは一言でSFと言うべきか。
そして蓬莱百貨店外商部、読み進めるほど面白く、まさにエンタメ作品である。けれどこれはそう括ってしまうべきか。
もちろんSFであるしエンタメであるのだが、その後ろにあるのはもちろん『人間』なのだ。
人間とは、感情のあるもの。
さて、あなたはこの作品根底にどのような感情があると読むでしょうか?
ぜひご一読ください。
本作を貫くのは、安易なテンプレートや流行を拒絶し、ひたすらに「緻密な世界構築」を追求する孤高の美学です。これほどまでに重厚な独自の世界観に浸れる贅沢は、他では決して味わえません。
近未来の中華風世界という舞台装置に加え、宇宙進出、AI統治、そして「百貨店の外商部員がエージェントとして戦う」という独創的な設定。その圧倒的なディテールは、もはやアマチュアの域を遥かに凌駕しています。ライト文芸の枠には収まりきらない、講談社文庫や新潮文庫などの棚に並ぶべき格調高い文体に惚れ惚れしました。
主人公の楊さんも最高に渋い!過去の栄光に縛られず、ハードボイルドに任務をこなす「大人のかっこよさ」に溢れています。 一方で、ヒロイン・柘榴(ざくろ)の存在感も底知れません。彼女の謎はあまりにも深く、物語が進んでも容易には全貌を見せない——。この「あえて核心を隠し続ける演出」が、読者の飢餓感を煽り、楊さんと共に彼女の真実を追い求めたくなる絶妙な没入感を生んでいます。
さらに、『銀河英雄伝説』への敬意を感じさせる描写もあり、SFファンなら「ニヨニヨ」が止まらない仕掛けも満載。
「流行を追うのではなく、物語の深淵を覗きたい」 、そんな本物志向の読者にこそ手に取ってほしい、重厚かつ鮮烈な一作です。
舞台は近未来。
巨大AI『皇』を御する統治委員会によって統治されている、木星軌道に位置する崑崙コロニーです。
主人公の楊は蓬莱百貨店の外商部員の一人。
通常、百貨店の外商部員といえば、富裕層や法人などのお得意様を担当し、店舗の外で商品を提案・販売する専門職です。
しかしこのお話の外商部員は少し異なります。百貨店内で各専門フロアで接客業をするかたわら、求めがあれば各担当地域へ赴き、そこの権力者からの『要望』を受けます。ついでにそこの動向の観察したりもします。
そんな楊にマダム・ハオからの私怨らしき依頼。そして現れる亡き友の妹。四年ぶりに会った柘榴はまるで別の少女のようで——。
依頼をこなしながら、楊は違和感を覚える少女の謎を追いかけます。
そこに改造兵たちの思惑も重なり、楊はコロニー内を駆けまわることになるのです!
謎が謎を呼ぶ展開で、飽きずにラストまで走らせてくれます。
本人たちは至って真面目にやっているのに傍から見ればシュールな追いかけっこシーンなど、ふと肩の力を抜いてくれる部分もあって楽しいですよ!
楊が癖アリなオジサンで、もちろん腕は良いのですが、元気な若者のようにどこまでも動けるぜ!次の日も元気だぜ! ではないのもリアルで面白いところです。
終盤には驚きの展開が待っています。
中華×裏社会×近未来、そして癖アリなオジサンたちにビビッと来た方へ。
お薦めです(^^)!
SFと中華を掛け合わせた独特の世界観に躍動感あふれるアクションシーンが光る作品です。
人間が宇宙に進出し、他の惑星にコロニーを作って暮らす時代。地球とコロニー間では衝突が絶えず、主人公・楊が住む崑崙コロニーも戦争の末に地球から独立を果たした経緯があります。
その戦争で功績を称えられながらも、現在は崑崙コロニーの中心にそびえる蓬莱百貨店で「外商部員」として働く楊(ヤン)。この外商部がなかなかクセつよで、崑崙コロニー内の問題を秘密裏に解決したりする、工作員じみた役割を担っています。
楊はなかなか気だるげで淡々と仕事をこなす男なのですが、蓬莱百貨店の社員として亡き親友の妹・柘榴と再会したところから物語が動き出します。
面倒ごとは避けたいと思いつつも亡き親友の願いを忘れられない、楊のキャラクターが非常に好感度が高かったです。
また、アクションシーン(バトルシーン)がめちゃくちゃかっこいい!私のお気に入りは着ぐるみと追いかけっこするところです。ぜひ読んでいただきたい……!
サブキャラクターたちも個性的で、飽きることなくワクワクしながら最後まで一気に読み進めました。
ひとつ注意点があるとしたら、小籠包が食べたくなることでしょうか。さりげない飯テロによだれが止まりません。飲茶食べたいです……
宇宙コロニーの中心にそびえる、壮麗な百貨店。宇宙のセレブたちをお迎えする(でもご安心を。ちゃんと地下惣菜売り場はあります/笑)その巨大市場の名は、『蓬莱百貨店』。
しかしこの煌びやかなフロアでひとり、どうにも販売員には似つかわしくない男が今日も腕時計を磨いている。顔を縦断する大きな傷に、スーツが違う方向に迫力を持ってしまいそうな無精髭。身内向けといえどもぶっきらぼうな言葉遣い。噛みつきそうな危険な雰囲気がありながらも自らを「コロニーの犬」と呼ぶそのおっさんこそ、主人公の楊(ヤン)。
時計売り場を担当する販売員でありながら、彼はコロニー内の危うい均衡を崩そうとする因子どもを先んじて叩く役目を仰せつかる『外商部員』──つまりは、ゴリゴリの戦闘兵なのだった。
まあ近未来SFなんていうとなんか堅苦しいですからね。端的に申し上げましょう。
……みんなー!!普段は売り上げ底辺の冴えないおっさんがスーツ着て銃ぶっぱなして戦うやつだよー!!大好きなやつきたよーー!!!ぶつくさ言いながらなんやかんや強くて有能、その上時々コミカルもあるやつだよーー!!百貨店のバックヤードでドンパチやったりするよーー!!!!今ならなんとちょっと生意気でミステリアスな中華小娘もついてきます!!あとはガラの悪い連中のボスでありながらスーツ着て堂々と百貨店に乗り込んでくるマッチョおじさまや、人がよすぎる子供たちに大人気のお医者さんなんかもでてきますよーー!!今が!確実に!!読みどき!!!
そんな感じのエンタメがぎゅっと詰まった作品ですが、お話の根底には「どうして宇宙なんぞに百貨店があるのか」──つまりどうして人類が母なる地球を離れなければならなかったのかという、切ない争いの記憶や傷跡が沈んでいます。単に新しい場所を作るだけでは解決しないこれらを見ていると、技術が進歩した遥か先の未来でも「人間って人間なんだなあ…」と難しい気持ちになってしまう。うーん、うううーん……
はい、それがつるよしの先生の作品の醍醐味です。美味しいね(※この読者はすでに改造兵となった身ですが、もちろん初見の方も何不自由なくお読みいただけます)。
作者さんの従来のファンには新鮮で、そして新規の読者さまにはぜひともおすすめしたい絶妙なバランスの一作。おすすめです。
いらっしゃいませ、お客様。
今日はどちらの章(フロア)へご案内いたしましょうか?
時は26世紀。以前は有能な軍人だった楊(ヤン)は、いまは「崑崙コロニー」を牛耳る「蓬莱百貨店」の外商部員として働いている。
そんな彼の前に現れた、旧友セルゲイの妹、柘榴。だが柘榴の性格は、楊の知る4年前のものとは別人のように変わってしまっていて――。
柘榴の変貌と「改造兵」の謎を軸に展開される、中華アクションSFです!
「カッコいいおじさん×少女」「エンタメ性とメッセージ性の両立」「緻密な世界観」「スピード感と躍動感あふれるアクションシーン」等々、作者様の魅力が凝縮されています。
一見シニカルだけれど根は熱くて優しい楊はもちろん、他にも数々の魅力的なミドルエイジの男女が登場し、物語を彩り賑わせてくれます。
楊の過去に象徴される、戦争の愚かしさへの批判にも大いに共感でき、いささか不遜な言い方ながら、作者様を“人間として信頼できる”と思わせてもらえます。
面白いけれどただ面白いだけじゃない、厚みと重みのあるエンタメをお求めの読者様は、ぜひこちら蓬莱百貨店にお立ち寄りください!
主人公は百貨店の時計売場担当の男、楊。実はコロニー内の荒事に対応する「外商部員」だった!
これまでつるさんの作品は数多く読んでいますが、一癖も二癖もある登場人物たちを絡ませ、引き込んでいく手腕が今回も光っています。
次から次へと起こるアクシデント、そしてオッサンのアクション! 読んでいて「次はどうなる?」とハラハラさせられます。
謎の少女・柘榴の正体を考えながら読むとさらに楽しくなること間違いなし。
個人的に好きなシーンは楊と柘榴の仕事(という名のデート?)のところです。
大きな出来事が済んだ後のエピローグで一旦お話は終わりますが、ぜひ続きを読みたいと思えるエンタメ作品です!