第2話 弟子
ゴーレムの間接部が軋み、脚に使われている土がボロボロと剥がれていく。
ついにゴーレムは自壊し、ノエルは勢いそのまま前方へ投げられた。
「……はぁ」
ため息をつく。ゴーレムに持たせておいた自分の足を回復魔法で繋なげる。
明らかに正気ではなかった。なんとなくだが、洗脳でもされていたのか?
少し前まで野菜の値切りでギャーギャーと言い合っていた店主、どう足掻いても怪しくなってしまう勧誘ベタの神父。
足は治った。ならば次にすることを考えなければ。
……
逃げた先を予測する。
僕が教えた知識からするに、おそらく隣街のデトメンだろうか。
……まずいな。デトメンは白教の信仰が盛んな街だ。魔法使いの女である以上、何が起きるかわからない。
何個か残してあったスクロールを使おう。
使い魔召喚、魔法馬
半透明の馬が光の中から現れ、今か今かと足で地面を擦っている。
頼むから間に合ってくれ……!
デトメンの関所の近く、見覚えのある人影がいた。……バートニーだ。
目の前には……衛兵が三人。
「衛兵さん。これで足りますか?」
バートニーは震える手で財布のお金を取り出した。
「……足りるね。だが、今関所を通る女性には特別な検査をするんだ。苦労して来たのだろうが、協力してもらえるかね?」
「は、はい。それでなにを検査するんですか?」
「いや、大したことではない。魔法使いかどうかをね。この宝石に手を当てて」
指示に従って、バートニーは宝石に手を乗せた。
その瞬間、宝石は眩い光を放った。
「……魔女だ!魔女が出たぞ!」
当たり前だが、バートニーは魔法使いだ。やはり見抜かれたか!
……救出する為の魔法を使うには、魔力が足りない。バートニーは大人しく縄で縛られている。
クソッ!衛兵にむやみに抵抗しなければすぐ解放されるなんて教えなければよかったな。
魔力が足りないのなら、贄を捧げれば良い。
身体を失うのであれば、膨大な魔力を得られる。
回復魔法でも再生しない不治の傷。
左手の小指を贄に捧げる。ジリジリと焼け爛れ、そのまま消えた。
激痛と共に魔力が身体に行き渡っていく。
なるべく派手に、なるべく弱く。
バートニーは結界を貼って守る。
「爆撃魔法!」
途端に関所は大きな爆発に包まれる。バートニーは結界で守っていたからか、爆発で吹き飛んだ。
急いで落下地点に馬を走らせて回収する。
「お師匠様!?助けに来てくださったんですか!」
「あぁ、もちろんだ。無事かバートニー?」
「も、もちろんです、お師匠様!」
「ならよかった。取り敢えずここは走り抜けるぞ!」
爆発を受けた衛兵が立ち上がってきた。
「魔女だぁ!捕らえろ!」
「殺せ!殺せ!」
……逃げるとなればやはりこうなるか。
まったく、何が起きているのだか。
なんとか拠点を作って、原因と思われる書物を回収して分析か。
……これは忙しくなるな。
魔法馬は草原を走り抜ける。向かい風をものともせずに走り抜ける。
次の行き先は、デトメン付近の大森林だ。
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