第六話 電車での再開
― 朝、どうしよう。
僕は起きてからずっとそのことで頭がいっぱいだった。
あの日から一週間。
図書室には一度も行っていない。
もちろん、星影さんが嫌いになったわけじゃない。
ただ、あんなことを言ってしまったせいで、会うのが少し気まずかった。
― けど…そろそろ行かないとダメだよな。
あの日以降も星影さんが図書室に来ているとは限らない。
それでも、僕は決心した。
― よし! 今日は行ってみよう!
そう思って、朝早く家を出た。
電車に乗り、数駅進んだ頃。
何となくドアの方を見たとき、見覚えのある制服の女子と目が合った。
星影さんだった。
「おはよう」
電車の中なので、少し小さめな声で挨拶すると、
「おはよう」
と、彼女も同じくらいの声で返してきた。
― 図書室じゃなくて、電車で会うとは思わなかった…。
そんなことを考えていると、星影さんが言った。
「隣、座っていい?」
「もちろんいいよ」
僕が答えると、星影さんは背負っていたリュックを下ろし、空いている隣の席に座った。
「偶然だね」
「そうだね」
― 何を話そう…。
数日会っていなかったうえにもともと女子と話すのに慣れているわけでもない。
こういうとき、何を話せばいいのか本当にわからなくなる。
そんなふうに頭の中でずっと迷っていると、数分後に星影さんが口を開いた。
「ねぇ」
「どうかした?」
「次、最寄り駅だよ」
「ほんとだ」
ちょうど電車が駅に着いた。
「降りよ」
「うん」
そう言って僕たちは席を立ち、電車を降りて改札へ向かって歩き出した。
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