第五話 五時間目の出来事
五時間目の授業が始まったとき、彼女は教室にいなかった。
「またサボりか?」
「さっきまではいたろ」
「それも気のせいじゃねーの?」
「そんなわけねーだろ」
そんな笑い声が聞こえてきた。
授業が始まって二十分ほど経ったころ、彼女が教室に入ってきた。
「あいつ戻ってきたぞ」
「サボりじゃなかったのかよ」
そんな声が後ろから聞こえた気がしたが、彼女は動じることなく教師のもとへ行き、
「早退します」
と言った。
教師は少し驚いたように顔を上げて、
「わかった。気をつけて帰れよ」
「はい、わかりました」
「荷物をまとめたら職員室に来なさい」
「わかりました」
そう言って彼女は静かに荷物をまとめはじめた。
教室を出るとき、教師は
「ちょっと出てくるから、お前らこのページの問題を解いとけよ~」
と言い残して、彼女と一緒に教室を出ていった。
教師が出ていくとすぐに、
「やっぱサボりじゃねーかよ」
「だから言っただろ」
「サボるなら最初から学校来んなって!」
「ほんとな~」
そんな声が聞こえた気がしたが、僕は聞こえないふりをして、その場をやり過ごした。
五分ほどして教師が戻ってくると、
「じゃあ授業再開するぞ~」
と言った。
そのころには、教室はもう静まりかえっていた。
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