第六話 見てしまったいじめの現場

始業式の日からちょうど一週間が経ったころ、珍しく学校に早く着いた僕は、図書室でのんびり過ごそうと思い、教室の前を通り過ぎようとしていた。

 そのとき、教室の中から声が聞こえてきた。


「前から思ってたけど、あいつサボりすぎだろ!」

「どうせ家でゴロゴロしてるんじゃないの?」


 “誰”という名前は出てこなかった。けれど、すぐに星影さんのことだとわかった。

 新学期が始まってからの一週間、彼女を見たのはたった一日だけだったからだ。


 そのまま通り過ぎようとしたとき、さらに声が続いた。


「どうせ来ないんだし、机の中に変な紙でも突っ込もうぜ」

「それはさすがにやばいんじゃない?」

「どうせ来ないんだし、変わんないって」


 ――もしかして、いじめ?


 嫌な予感がして、少しだけ開いていたドアの隙間から中を覗いた。

 ちょうど数人が、星影さんの机の中に紙を詰め込んでいるところだった。


 ――止めないと。


 そう思った。けれど、体が動かなかった。

 ――もし止めたら、今度はいじめの矛先が自分に向くかもしれない。


 そんな考えが頭をよぎり、気づいたときには、僕は教室から離れ、図書室へと足を向けていた。

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