第二話 物静かな女の子と放課後の話
自分の席について周りを眺めていると、クラスの端の席に座っている女の子が目に入った。
彼女はマスクをしていて、ほとんど喋らない。どこか物静かで、近寄りがたい雰囲気をまとっていた。
彼女を見た瞬間、僕はふと思った。
――あんな子、うちの学年にいたっけ?
気になって、隣にいた友人に聞いてみることにした。
「なぁ、端の席にいるあの子、知ってる?」
「あぁ、あの子はたしか……星影さん?だった気がする」
「去年クラス一緒だったけど、入学してからあんまり学校来てなかったんだよ。だから違うクラスだったお前は知らないかもな」
「へぇ、うちの学校にもそんな子いたんだ」
そんな話をしていると――
「HR始めるから席つけー!」
担任が教室に入ってきた。
そのままホームルームが始まり、始業式や教科書の受け取りなどを済ませているうちに、いつの間にか帰りのSTが終わっていた。
鞄をまとめていると、後ろの席から声が飛んできた。
「おーい、桜一郎! 今日暇?」
「特に予定はないけど、どうした?」
「だったらカラオケ行かね?」
「いいけど、今日財布持ってきてねーわ」
「だったらとりあえず金貸すから、明日倍にして返せよ~」
「じゃあ行かないわ」
「嘘だって! 普通に一倍でいいから!」
「よっしゃ、来た~!」
功介が嬉しそうに笑いながら教室を出ていく。
僕も苦笑いしながらその後を追いかけ、廊下へと出た。
そのとき、何気なく教室の中を振り返る。
――けれど、さっきまでそこにいた彼女の姿は、もうどこにもなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます