第一章 4月:新学期が始まって
第一話 始まりの朝
4月のある晴れた日のこと。
僕(岡部 桜一郎、おかべ よういちろう)は学校へ続く坂道を歩いていた。
ふと見上げると、淡い桜の花びらが風に乗って舞っている。
今日から始まる新学期。
新しいクラス、新しい出会い、そんな期待と少しの不安が胸の中で入り混じっていた。
「おっはよ~!」
後ろから明るい声が飛んできた。
振り返ると、そこには友人の(広上 功介、ひろかみ こうすけ)がいた。
「おはよ~」
「クラス、どうなると思う?」
「今年は一緒だといいな」
そんな他愛ない会話を交わしながら、二人で校門をくぐる。
クラス発表の紙が貼られるという校舎横のフェンスには、すでに人だかりができていた。
時計を見ると、時刻はまだ8時前。
「クラス発表って8時からだっけ?」
「たしかそうだったはず」
そんな話をしていると、教師たちが姿を見せた。
「いまからクラス名簿を貼る。押し合わずにゆっくり見ること。わかったな」
フェンスに名簿が貼られた瞬間、あちこちで歓声や悲鳴が上がる。
「よっしゃ同じクラスだ~!」
「くっそ、彼女と別かよ……」
ざわめきの中、少しずつ人がはけていく。
「俺らもそろそろ見に行くか」
「そうだな~」
紙に目を走らせると、そこには二人の名前が並んでいた。
「お、今年は同じクラスだ!」
「そだな」
「何だ、嬉しくないのか?」
「いや、今年は騒がしくなりそうだな~って」
「それが楽しいんだろ」
二人は笑い合いながら、少しだけ緊張の解けた足取りで教室へと向かう。
教室に入ると、黒板には新しい座席表が貼られていた。
名前を探し、自分の席に腰を下ろす。
新しい学年、新しい時間が、ここから始まる。
そんな予感に、僕は静かに胸を高鳴らせた。
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