ゲーム終了

「はい、ではお疲れ様でした」


 貴方が見ていたディスプレイは消え、目の前のスピーカーから声が聞こえる。


「これで動画は終了です。では、あなたがこの十数人のゲームのプレイ映像を見てどの結末が一番いいと思ったか、そしてその結末を選んだ理由を、目の前にある紙に、その隣にある鉛筆を使って書いてください。」


 貴方は先ほど見た映像を、思い出す。

 どの結末が良かっただろうか。

 一番救いがあったのは、あのEndだった。

 一番共感したのは、あのEndだった。

 一番嫌だったのは、あのEndだった。

 何を基準にして、何を選ぶのかは、全て貴方が選択することである。

 貴方が何を書くか考えているうちにスピーカーが話し出す。


「そういえば独り言なのですが、人というのは選択する力というのナイフを持っていますよね。そして常に、何の選択肢を残す生かすか、何の選択肢を捨てる殺すか、常に選んでいます。なんだかこのゲームに似ている気がしません?」


 貴方は鉛筆を持つ手を動かす。


「そしてだいたい二択か三択、果てには一択の選択肢で悩んでいる。世の中にはもっと多くの選択肢があるのも知らずに。まるで目の前にある選択肢殺すか殺さないかしかないと思い込んで。人間って悲しい生き物ですよね。」


 貴方は鉛筆の後ろの消しゴムで間違えたところを消した。


「ところで、あのゲーム。本当にゲームだと思いますか?」


 貴方は書き終わり、その旨をスピーカーに向かって伝える。


「シカトですか、まあいいですよ。じゃあその紙はそこに置いておいてください。あなたはもう用済みなので、後ろのドアから出て行っていいですよ」


 貴方が後ろを振り向くと、いつの間にかドアが出現していた。

 貴方はこんなよくわからない場所に長くいたくなかったので、いそいそとドアへと向かい、ドアを開けた。

 ドアの先には光が広がっており、それを見ると同時に貴方は意識を失った。

 意識が落ちる寸前、あの機械音声が聞こえた。


「良い夢を」


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 目が覚める。

 辺りを見渡す。

 いつもと変わらない自分の寝室の光景だ。

 ただ一つ、布団のちょうど腹の上辺りにナイフが置かれていることを除いては。


 恐る恐るナイフを見つめる。

 ナイフは鈍く銀色に光っていた。

 その光は己を飲み込みそうな狂気的な美しさを持っていた。


 ナイフを手に取りますか?


 Yes

 No


End?全てを知る者

「全てを知っているからこそ味わう絶望というのもある」

by全てを知る者

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