End2
目が覚める。
辺りを見渡す。
いつもと変わらない自分の寝室の光景だ。
ただ一つ、布団のちょうど腹の上辺りにナイフが置かれていることを除いては。
恐る恐るナイフを見つめる。
ナイフは鈍く銀色に光っていた。
その光は己を飲み込みそうな狂気的な美しさを持っていた。
ナイフを手に取りますか?
Yes
No
「Yes」
その美しさに魅入られてナイフを手に取った。
それは手に吸い付くかの様によく手に馴染む。
己の心の奥底の渇望が膨れ上がった様な気がした。
どうする?
テーブルの上を見る
二度寝する
タンスを開ける
「テーブルの上を見る」
テーブルの上を見た。
上には様々な小物が置いてある。
どれを取る?
スマホ
ロープ
薬
「スマホ」
スマホを取った。
これを殺しますか?
Yes
No
「No」
いや、ダメだ。これがなかったら今の時代、何もできなくなってしまう。
仕事でも、連絡でも、娯楽でも今は全てスマホがなければやっていけない。
それに、これは私と彼を繋ぐ唯一のものだから。
ナイフを左手に持ち替え、右手でスマホを掴む。
そのままスマホにパスワードを打ち込み、チャットアプリを開く。
相変わらず彼からの返事は返ってきておらず、自分のメッセージには、ただ既読だけがついていた。
……あんだけ私のこと好きだって言ってくれていたのに。
一緒にデートに行って、一緒に旅行にも行って、キスまでしたのに。
最後は既読スルーで終わり?
どうして返事をくれないの?
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして。
ナイフの柄を強く握り締める。
握るとナイフは何かを吸っているかの様にドクドクと波打つ。
それと同時に少しずつ心の狂気が晴れていった。
息を大きく吸って、吐く。
さてどうしよう。
どうする?
そのまま部屋にいる
リビングに行く
彼に会いに行く
「彼に会いに行く」
よし、彼に会いに行こう。
そして返事が来ない理由を問い詰めてやるんだ!
手に持ったナイフを握り締める。
ドアを開けて廊下に出る。
そこには、丸い半透明の薄く光る何かがいた。
よくよく見ると球の中に理性という文字が浮かんでいる。
理性がいる。殺しますか?
Yes
No
「Yes」
そもそも理性があったら、彼を問い詰めることなんてできない。
彼の家に押しかけることもできない。
ナイフを振り下ろすと理性はいとも簡単に砕けた。
呆気ない。
そのまま階段へと向かい、ゆっくりと降りる。
大丈夫、彼は逃げない。
降りた先には同じ様に、今度は恐怖が立ち塞がっていた。
殺しますか?
Yes
No
「Yes」
勇気を持ってナイフを振り下ろす。
少し抵抗があったが意外とすんなりと球は割れる。
そのまま落ちた球はガラスの粒となり、やがて消えた。
彼のところに行くのに恐怖は要らない。
必要なのは会う勇気と真実の愛を行う勇気だけ。
階段を降りると廊下を進む。
玄関へと続く道は、ウェディングロードの様に光輝いて見えた。
玄関へと至ると最後の球が聳え立っていた。
球の核には大きく、己のリミッターと書かれている。
殺しますか?
Yes
No
「Yes」
これを壊したらもう元には戻れなくなる気がする。
でもそれで良い。
君のいない人生に価値はないから。
球は、細かく砕けて霞となり、薄くなってやがて消えた。
自分が自由になったのを感じる。
倫理観、責任感、罪悪感。
そんなものは全て消えた。
ただあるのは君への純粋な愛だけ。
ナイフを持って鍵を回し、扉を開ける。
さあ、彼に真実の愛というものを伝えに行こう。
外は太陽の光で眩しく、輝いていた。
End2 ヤンデレ
「ねえ、どうして連絡くれないの? えっ重すぎるって? あと別れたいって今言った? そっか〜でも私は別れたくないな、永遠に。ねえ、一緒に黄泉の国に行けば、ずっと一緒にいられるかな?」
by ヤンデレ
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