第15話 嘘だ~ぁぁ!!
「おうおう。まさか、“プロ試験大会本戦2回戦進出者”様に名前を覚えてもらえてるなんてなぁ。」
嫌味のこもった声で、
「自分が1回戦で負けたからって、嫌味な言い方をするなよ。お前を倒したのは、オレじゃない。」
そう言う銀髪男子に、燐は軽く微笑むと言葉を返す。
「そうやな。オレもお前も同じ男に負けた者同士、仲良くしよか。なぁ──」
「“
本戦に上がる16人の名前を見ていた
「な、なんだよいきなり。びっくりするなぁ。」
そう
そんな猛進の後ろから顔を出して、
「木下透って、プロ試験大会本戦で
「あぁ、多分その木下透だ。
同姓同名じゃなきゃな。」
一人、話についていけなかった猛進が、二人の会話に割って入る。
「そいつがこの大会に出てるのか?」
猛進の質問に、純は目の前のランキング表を指差しながら答える。
「あぁ。予選2位で本戦に上がってる。」
猛進の視線はランキング表に向けられる。
1位・
2位・木下透。
この二人の名前を見て、猛進は笑みをこぼす。
「この木下って奴も、もちろん強いんだろ?」
そうワクワクした声で尋ねてくる親友に目線を向けると、純はさらに猛進の心を熱くさせるような口調で答える。
「あぁ。遠山と同格だと言ってもいい。
対戦くじの運が良かったら、二人ともと戦えるかもな。」
純の言葉に、猛進の心は張り裂けそうなほど熱く燃える。
*
大会はどんどんと進み、本戦の1回戦と2回戦が終わる。
10分間の休憩の後、いよいよ準決勝と決勝戦が行われる。
猛進はもちろん、1回戦と2回戦を難なく勝ち進んだ。
「遠山も木下もちゃんと残ってるな。」
準決勝進出者の四名の名前を見上げながら、純が言う。
「当たり前だよ。オレ以外の奴との戦いでコケてもらったら、冷めるからな。」
そう言ったあと、猛進はニコッと笑みを見せて言葉を続ける。
「準決勝と決勝、こいつらと戦えるのがベストだ。」
楽しそうにしている猛進を見て、応花が小さな声で純に話しかける。
「これは兄々の作戦勝ちかな?」
「作戦勝ち?」
「ほら、言ってたでしょ?
公式戦に1回でも出させれば、うり兄は来月からも自発的に出るって。
この様子だと、本当にその通りになりそうじゃない?」
そう満面の笑みで言う妹に、純は「……あぁ、そうだな。」と笑顔を作って答える。
(そういえば、そんなことも言ったな。
完全に忘れてたよ。)
そう純はこっそり心の中で思うのであった。
「あっ、いた~ぁ。」
そう誰かが猛進たちに向かって声をあげるので、三人は目線をその声の主に向ける。
声の主は、猛進の母親だった。
その母親に引っ張られるように、父親もついてきている。
その父親の顔はパンパンに腫れていた。
「ど、どうしたんですか? おじさん。」
そう純が驚いた声で尋ねる。
「あぁ、このバカのことは気にしないで。すこ~し教育をしただけだから。ね~ぇ。」
妻の殺気のような圧力におされ、夫は「は……はい。」としか答えられなかった。
訳が分からずポケ~ッとした顔をしている純と応花に、猛進が小さな声で説明する。
「いつものことだよ。多分、親父がキャバクラで遊んでたのを母さんがボコボコにして、ここまで連れてきたんだよ。」
「キャバクラ?! まだ昼過ぎだぞ?」
そう驚く純に、猛進は呆れた目を父親に向けながら答える。
「今どき、昼からやってるキャバクラも少なくない。これもきっと、労働が終わったことによる娯楽の強化の1つなんだろ? まぁ、未成年のオレたちには関係のない話だがな。」
「なるほど。自分の趣味に全力で生きてる、いいお父さんだな。」
「はっは~ぁ。尊敬はできないけどねぇ。」
純の言葉に、猛進は乾いた笑いを返す。
《お待たせしました。これより、準決勝と3位決定戦、そして決勝戦を行いますので、参加される選手とメインフロアの観客チケットをお持ちのお客様は1階までお越しください。残りのお客様は、2~5階の観戦フロアのモニターでお楽しみください。》
そんなアナウンスが場内に響き渡る。
「よし。いくか。」
そう言って純は猛進の背中を強く叩く。
その強さに軽く咳き込みながらも、猛進は「おう。」と答える。
*
「それでは、準決勝に進んだ四名をご紹介いたしましょう!!」
そうマイクを持った司会者の男性が大きな声で叫ぶ。
「まず、予選第1位通過、遠山燐選手。
次に、第2位通過、木下透選手。
次に、第6位通過、“
最後に、第16位通過、本間猛進選手です。」
そうテンポよく司会者は選手の紹介を行う。
(横長って奴はどうでもいい。
とにかく、遠山と木下だ。
この二人と絶対に戦ってやる。)
猛進は熱く燃える瞳で、燐と透の二人を見つめる。
「それでは、続きまして、対戦カードを決めるくじを引いていただきます。」
そう司会者が言うと、猛進たちは順番にくじを引いていく。
その結果は──
1回戦・猛進VS学。
2回戦・燐VS透──となった。
(う……嘘だ~ぁぁ!!)
悲しみの叫び声が、猛進の心の中で響き渡る。
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