第6話 ボクが青山昇だ
「う~り坊。」
そう声をかけながら
自分より10cm以上身長の低い猛進の顔を見下ろしながら、純は嬉しそうな顔を見せて言う。
「
純の言葉に猛進は恥ずかしそうに目線を逸らすと、「まぁな」と小さな声で答える。
「オレの言った通りだっただろ?」
「え?」
純の言葉の意味が分からず、猛進は顔を上げる。
「プロの世界には、オレとの
純の中学生らしい子供の笑顔を、猛進は黙って見つめたあとに言葉を返す。
「随分と楽しそうだな。」
猛進の言葉に純は笑みを強くすると答える。
「楽しいよ。これからの自分のボウリング人生を考えたらな。
なんせ、
真っ直ぐ自分を見つめてくる純の視線から逃げるように、猛進は目線を逸らす。
そんな猛進の目に、廊下の掲示板に貼られたポスターが留まる。
「なんだ? これ?」
猛進の言葉に、純も目線をポスターに向ける。
「今、ボウリング界で話題の天才ルーキー
猛進がポスターに書かれた文字を読み上げると、2人はお互いの顔を見合わせる。
「お前、この青山ってやつと戦うの?」
そう猛進が尋ねると、純は首を左右に振ってポスターから顔を遠ざける。
「知らねぇよ。そもそも誰だよ、青山昇って。」
そう文句を言う純の背後から声がかかる。
「ボクが青山昇だ。」
その声に、猛進と純の2人は目線を背後に向ける。
そこに立っていたのは、水色のおかっぱヘアをしてメガネをかけた男子生徒だった。
「お前が青山昇か。このポスターはどういうことだ? お前とオレは今初めて会ったばっかだよな?」
そう純が後ろの掲示板に貼られたポスターを親指で指しながら尋ねる。
「あぁ。そうだね。直接会うのは初めてだよ。でも、ボクは君に勝たなくてはいけない。」
訳の分からない昇の言葉に、純は「はぁ?」と聞き返す。
そんな純に昇は1歩近づくと、強い敵意をまとった瞳で純を睨む。
「ボクのプライドを護るために、君に勝たなきゃいけないんだ。 2ゲームパーフェクトで1位プロ入り? 君が……君が1位でプロに入れたのは、ボクがその大会に出ていなかったからだ!! 今日、君に勝ってそれを証明する。」
勢いのある声で昇は純に戦いを挑む。
必死そうな昇の姿を見て、純は微笑みを見せると自信満々の声で言う。
「別に戦ってやってもいいけど、大衆の前で恥かいてプライド粉々になっても、文句言うなよ。」
「それはボクのセリフだ。」
熱く睨み合う2人を、猛進はただ黙って見つめていた。
(この場にいるの……すっごく気まずいんだけど。)
そんな言葉が猛進の心の中に出てくる。
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それでは、また次回お会いしましょう。
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