第6話 ボクが青山昇だ

猛進もうしんりんが対決した次の日、東下とうか第一だいいち中学校。


「う~り坊。」


そう声をかけながらじゅんは前を歩く猛進の肩に手を回す。


自分より10cm以上身長の低い猛進の顔を見下ろしながら、純は嬉しそうな顔を見せて言う。


応花おうかから聞いたぞ。お前、プロになる気になったんだって?」


純の言葉に猛進は恥ずかしそうに目線を逸らすと、「まぁな」と小さな声で答える。


「オレの言った通りだっただろ?」


「え?」


純の言葉の意味が分からず、猛進は顔を上げる。


「プロの世界には、オレとの試合あそびに負けないほど、面白い試合あそびがあるって。 お前が戦った遠山とおやまも、間違いなくこっちの世界に来れるほどの力を持った選手だ。あいつレベルの奴らがプロの世界にはゴロゴロいるんだぜ? ワクワクしてたまんねぇだろ?」


純の中学生らしい子供の笑顔を、猛進は黙って見つめたあとに言葉を返す。


「随分と楽しそうだな。」


猛進の言葉に純は笑みを強くすると答える。


「楽しいよ。これからの自分のボウリング人生を考えたらな。

なんせ、本者ほんものと呼ばれるプロたちと戦えて、1年後にはプロになったお前とも戦えるんだから。これ以上、理想の人生はねぇよ。」


真っ直ぐ自分を見つめてくる純の視線から逃げるように、猛進は目線を逸らす。


そんな猛進の目に、廊下の掲示板に貼られたポスターが留まる。


「なんだ? これ?」


猛進の言葉に、純も目線をポスターに向ける。


「今、ボウリング界で話題の天才ルーキー夢近ゆめちか純に、東下第一中ボウリング部エースの青山あおやまのぼるが挑む!! 天才VS天才の熱き戦いは、体育館にて開催!!」


猛進がポスターに書かれた文字を読み上げると、2人はお互いの顔を見合わせる。


「お前、この青山ってやつと戦うの?」


そう猛進が尋ねると、純は首を左右に振ってポスターから顔を遠ざける。


「知らねぇよ。そもそも誰だよ、青山昇って。」


そう文句を言う純の背後から声がかかる。


「ボクが青山昇だ。」


その声に、猛進と純の2人は目線を背後に向ける。


そこに立っていたのは、水色のおかっぱヘアをしてメガネをかけた男子生徒だった。


「お前が青山昇か。このポスターはどういうことだ? お前とオレは今初めて会ったばっかだよな?」


そう純が後ろの掲示板に貼られたポスターを親指で指しながら尋ねる。


「あぁ。そうだね。直接会うのは初めてだよ。でも、ボクは君に勝たなくてはいけない。」


訳の分からない昇の言葉に、純は「はぁ?」と聞き返す。


そんな純に昇は1歩近づくと、強い敵意をまとった瞳で純を睨む。


「ボクのプライドを護るために、君に勝たなきゃいけないんだ。 2ゲームパーフェクトで1位プロ入り? 君が……君が1位でプロに入れたのは、ボクがその大会に出ていなかったからだ!! 今日、君に勝ってそれを証明する。」


勢いのある声で昇は純に戦いを挑む。


必死そうな昇の姿を見て、純は微笑みを見せると自信満々の声で言う。


「別に戦ってやってもいいけど、大衆の前で恥かいてプライド粉々になっても、文句言うなよ。」


「それはボクのセリフだ。」


熱く睨み合う2人を、猛進はただ黙って見つめていた。


(この場にいるの……すっごく気まずいんだけど。)


そんな言葉が猛進の心の中に出てくる。


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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。今回はここまでです。

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それでは、また次回お会いしましょう。

またね~。

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