第5話 行ってやろうじゃねぇか
覚醒モードになった
対する燐は、第8フレームが19点のスペアだったが、続く第9フレームで見事ストライクを取る。
*
「最終フレームか。」
スコアボードを見上げながら燐は呟くと、猛進の方に振り返って笑みを見せる。
「このままやっても、ワイがストライク取って終わりや。それやと少しつまらんやろ? やから、ワイも1つえぇもん見せたるわ。」
そう言うと、燐はボールリターンに取り付けられたデータ実体化器の下に自分のスマホをセットし、スマホを操作して“マイボール”を復元する。
この時代ではマイボールをいちいち持ち歩くことはしない。
データ化してスマホのアプリで管理し、データ実体化器で物体に復元するのだ。
復元された、“海賊のフック手”が描かれた金ぴかのマイボールを、燐は右手に構える。
しっかりと狙いを定め、助走をつけてボールを放つ。
放たれたボールはレーンの真ん中を真っすぐ走る。
「これって、第1フレームで投げたボール?」
レーンの真ん中を真っすぐ走っていたボールが、1番ピン手前で急に右へ曲がる。
「ここまでは第1フレームと同じ。」
真剣な眼差しで見つめる猛進の目の前で、右に曲がったボールは1秒も経たないうちに今度は左に曲がり、ポケットへ吸い込まれる。
綺麗にポケットへ入ったボールは、10本のピンすべてを倒す。
ボールが通った軌道には、海賊のフック手が
「どや。お前の超速ストレートにも負けへん、おもろい球やろ?」
そう燐が猛進に目線を向けて微笑む。
燐の笑みを、猛進は少し崩れた笑みで返す。
「まぁ、何はともあれ、けっこう楽しめたで。ほな、さいなら。」
マイボールをデータに戻し、ボールリターンからスマホを取り出すと、燐は猛進の肩を軽く叩いてその場を去っていく。
去っていく燐に目を向けず、猛進はただ真っすぐスコアボードを見上げていた。
トータルスコア──猛進:225点、燐:234点。勝者:燐。
「……負けた。」
そう小さく呟く猛進に、応花が「うり
心配する応花の気持ちとは裏腹に、猛進は大きく笑い出す。
「これが、プロを本気で目指してるやつの実力か。これが
急に名前を呼ばれて驚いた様子で、応花は「え?」と返事をする。
「興味が出てきたよ。プロの世界ってやつに。」
そう微笑みながら言う猛進に、応花はパーッと明るい表情を見せる。
「じゃ、うり兄も?」
「あぁ。行ってやろうじゃねぇか。
純が待つ、プロの世界ってやつにな。」
そう答える猛進の目は、熱く燃えていた。
*
その日の夜、
「──ってことがあったのよ!!」
嬉しそうに昼間の出来事を応花は兄である純に話す。
「へぇ、猛進のやつ、あいつと戦ったのか。そりゃぁ火がつくわな。」
そう微笑みながら言うと、純はブラックコーヒーをひとくち口に運ぶ。
「いや~ぁ、楽しみだなぁ。
プロの世界での
ニコニコと笑顔を見せて嬉しそうにしている妹に、純は目線を向けて軽く微笑む。
「お前より、オレの方が楽しみにしてるよ。オレ以外の奴と戦ったことのないあいつは、まだ経験値で言うとレベル1ってとこだ。
でも、これからはどんどんいろんな奴と戦う。
その戦いで得る経験値で、あいつのレベルは跳ね上がるぜ。
そんなあいつと
純はニヤニヤが止まらないほどワクワクしていた。
「レベルが跳ね上がるのは、うり兄だけじゃないでしょ?
兄々だって、これからアマチュア時代とはレベルの違う
「あぁ、もちろん。猛進以外の誰が相手でも、負ける気はしてねぇよ。」
「さすが、今年の新人で1番話題に上がってる男は違うねぇ。
何しろ本戦決勝で、2ゲーム連続パーフェクトで1位プロ入りだもんねぇ。
この話題性に負けない活躍、期待してるよ。」
「おう。任せとけ!!」
そう自信満々に純は答えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。今回はここまでです。
この作品が面白いと思ってくれた人は、星、ハート、作品フォローお願いします。
サポーター限定の近況ノートでは、この作品の世界設定をできるんだけ詳しく説明しています。興味のある人はサポーターになって、読んでみてください。
それと、良かったらぼくの他の作品も読んでみてください。
それでは、また次回お会いしましょう。
またね~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。