「僕もいつか」

高校一年生の終わり—。



僕はとある噂を聞き毎日興奮が止まらなかった。

と言うのは地元で有名な他校の同い年の桜庭千秋と付き合えるかもしれなかったからだ。


なんでその噂が出だしたかは二年前の中学二年生まで遡る。

千秋は元々前にこの話に出てきた由里香と親友だった。由里香はその頃から僕らとは学校が違いみんなと仲良いわけじゃなかったけどその明るさ、親しみやすさから他校にも関わらず部活などで仲良くなる子はたくさんいた。


スタイルも良く笑顔も可愛い愛嬌もある。おまけに性格までいい。そんな千秋の彼氏はうちの学校の城島遥希だった。正直激震が走った。それは何故か、そう。遥希は一番と言ってもいいぐらいうちの学校でブサイクだったのだ。体重は100kgを超え帰宅部、頭もそんなに良くなく人と仲良くするのも苦手という人間性も欠如した男だったがあの可愛い千秋が遥希に惚れたという。


すぐに夢の時間は終わってしまったのか千秋は遥希と二ヶ月も続かなかった。ただすぐに彼氏がまた出来た。相手はうちの学校のラグビー部の飯島大輝。彼はラグビー部補欠。なのにレギュラー入りしてるようなそぶりで誇らしく自分のことを語る変な男だったのだ。体重は驚異の140kg、運動神経もパワー系以外よくなく頭もそこそこだった。


そんな大輝ともすぐ別れたのだがここでうちの学校は沸きに沸いた。そう100kgを超えてるのはあとは僕のみだったからだ。これまでの恋愛遍歴から勝手に千秋はデブ専認定をされてしまったのだ。万年デブ専女だったのだ。


その頃僕はまだ仲良くもなかった千秋も参加する予定のホームパーティーに招待してもらった。

もちろん間接的だったりで少しは話したことはあったが、がっつり話すのは初めて。実際の千秋はそんな緊張感も一瞬で吹っ飛ぶぐらいの明るさだった。


それから何回か千秋とも遊ぶようになったのだが一つ気になる点がある。

それは千秋が「竜秋くん」と「くん」付を必ずしていたのだ。


僕は次期彼氏だぞ!!!呼び捨てしていいんだぞ。痺れを切らした僕は自分から本人に聞いたのだ。なんで遥希も大輝も呼び捨てなのに僕だけ「くん」なの?と


すると。「「アグネスチャン」のちゃん的な要素なんだよね。「クロちゃん」的なもう「くん」がついて初めて名前呼べるって感じ?」


僕はこの言葉で「あ、絶対彼氏候補から除外されてると気づいてしまったのだ。



それから数年一応待ってみたが結局僕と千秋が付き合うことはなかった。あれから一度だけなんでデブばっかり狙ってんの?と聞いたら他に狙う子がいないから友達と被ったりしなくて安心と言っていた。


そんな千秋は最近結婚。23にしてママに。でも僕にはもっと気になることが…

結局どんな人を相手に選んだのかということだ—。

千秋は普通にベンチャー企業の社員と結婚した。そこそこかぶりありそうなところだ。


あの時どうして僕だけ彼氏になれなかったのだろう。

少しだけ自惚れるなら僕は被りがありそうとでも思われたのかな。

長い時間その子のことを考えることを「恋」と呼ぶのなら僕はきっと千秋に「恋」をしていたのだろう。



僕はずっとあなたの彼氏になりたかった。彼氏になれた僕と同じもしくはそれ以上のスタイルの二人をどれだけ羨ましく思ったことか…

「万年デブ専女」こと桜庭千秋

僕はあなたのことが大好きでした。































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