「僕の後悔」

高校一年生—。



僕は何度も言ってるが僕が通った高校はまるで「ごくせん」のような高校だった。

ヤンキーじゃない方が浮くような問題起こしてない生徒の方が少ないような先生たちの授業をまともに聞いてるとびっくりされるような高校に僕は通っていた。


そんな世紀末のような高校で友達もできなかったが唯一友達ができた。

その子の名前は上田希

希は可愛い顔していつもニコニコ笑っている天使のような子だったのだが仲良くなったばかりの僕に「岩山って女々しいよね」とはっきり言うような天使に見えて友達には毒舌の悪魔の女だった。


僕はそんな悪魔のような希と仲良くなり学校で話すことも多くなった。

僕は岩山という苗字があまり好きではなく友達には特に下の名前の竜秋と呼んでほしかったのだが希は常に僕のことを「岩山」と呼んでいた。

僕が下の名前と呼んでと言っても「岩山」の一点張りだった。


それに希は少し変わっていて呼ぶ時は岩山と呼ぶが基本名前を呼ばない。

呼ばないどころか、そもそも一人称がおかしい。

自分のことは「こっち」僕のことは「そっち」そしてその場にいない人のことを「あっち」と呼んでいた。そんな希との会話は「こっち」「そっち」が乱発されるのだ。

そんな「あっちこっちそっち女」の希だったが常に僕のことを気遣ってくれていた。


僕が風邪をひいて学校を休むと「ちゃんと寝なさい」とLINEをしてきてくれたり休んだ日に勉強したページのノートを見せてくれたり

次の日の小テストの範囲を教えてくれたり、まるで彼女のような立ち回りをよくしてくれていた。

そういうLINEをしている中で希はよく使っていたLINEのスタンプがあった。

まるさんというデザイナーさんが描いているスタンプでただの可愛い女の子のスタンプ。周りに使っている子はいなくて僕の中では希専用スタンプとなっていた。


そのスタンプの女の子はまるで希のような女の子でそのスタンプを見るだけで癒されていた。


ある日、希があるクラスメイトといい感じという話がクラス中に広まった。

相手はサッカー部の男子。特に人気のある男子ではなかったが僕にですら優しいような男の子で希が好きになってもおかしくないだろうなという男だった。


僕は少しだけやきもちを焼いたが希がその彼を好きというのもなんかの噂だろうと思っていたから特段気にはしていなかった。

二人はそれからすぐに付き合った。

希はそれから僕と話すことは無くなった—。


喧嘩をしたわけでもないしきっと嫌われたわけでもないと思う。でも気まずくて僕から声をかけることはなかった。


それから約一年がたった。希に相談したいことなどたくさんあった。話したい。そう思いながら暮らした1年間だった。

二年生になると僕らはクラスも離れさらに話すことは無くなった。LINEをすることも全く無くなっていた。


そんなある日—。


「岩山!今までごめん!こっち今日からまた話せる!」

「え?」


聞くと、そのサッカー部の彼氏は僕と仲良いのを妬いていたらしく僕と会話するのもLINEするのもやめて欲しいと言われたそうだ。

僕はそう言われ嬉しくて嬉しくて何もないのに希にLINEをした。


すると届いたのはあの女の子のスタンプ。


「そのスタンプ、久々見たわ。希しか使ってないから」

「今日からまたいっぱい見れるよ」





その言葉に僕は致死量のキュンを感じたことをいまだに覚えている。


相当彼のことを好きだったらしく希はそれからしばらく落ち込んでいたように感じた。

僕はもう少し自分に自信があれば希に「俺にしろよ」と気持ちを伝えていたと思う。


何度も希が彼女ならと思ったことはあった。

だけどその度、僕は自信が持てなくて諦めて一人で落ち込んでいたことを今でも思い出す。

あの時、希に気持ちを伝えていたら希は僕のことを好きになってくれたのだろうか。あんなに優しくしてくれていたのは「友達」という理由だけだったのだろうか。

本当は1ミリぐらい僕のことを思っていて……なんて思ったこともしょっちゅうあった。それぐらい希には本気だったのだ。





これまでここで紹介した僕が大好きだった女の子たちとは違う。きっと希は僕が本気で恋をしたうちの一人の女性だと思う。



もう一度あの日に戻れるなら「今日からまたいっぱい見れるよ」と言われた日に告白をしていればと思う。したからといって変わるとは思わないが気持ちを伝えないまま離れたのは僕の中でも後悔は大きかった。

いつかまたあの頃のように頻繁にLINEすることが増えたら僕はまたあのLINEスタンプに癒されたいと思う。

そして彼女になったとしても毒舌な言葉を常に言っていて僕の隣で笑っていてほしい。


そういえば書きながら思い出したが希が最初に僕の書き物を褒めてくれた相手だった。望みがいなければこんなこと僕はしてなかったかもしれない。

僕は良くも悪くも希に人生を狂わされたのだ—。



あの頃、僕のこと彼氏にしてもいい瞬間って1ミリでもありましたか?

あの時自信を持って告白すればよかった。

もしあったとしたなら僕はこの先の人生さらに後悔するかもしれませんがこれまで以上に自信も持てそうです。いつかその時の答え合わせ二人でしようね。

その時はあの女の子のLINEスタンプをどうか僕に乱用してください。

そして僕をいつか「竜秋」と呼び捨てで名前を呼んでね。



「あっちこっちそっち女」こと上田希

僕はあなたのことが大好きでした。














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