「1日限りの女神様」
中学二年生の冬—。
僕は柔道部で過酷な練習をしていた。
大変な練習の毎日だった。
驚かれるが僕らの顧問は女性の先生だった。
名前は本井七瀬
年齢も23歳と僕らとも歳が近く
僕たちは七瀬先生と呼んでいた。
七瀬先生はとても華奢で本当に柔道をやっていたのだろうか—。
と言った感じの先生だがなんと5段。
しかも現役時代は120kgを超えていたという。
指導もとても怖く僕はあまり七瀬先生が好きではなかった。
好きではないというより苦手だった。
しかも七瀬先生は僕の担任だった。
ということは修学旅行も七瀬先生だ。
部活の顧問が担任の修学旅行なんて楽しめそうにない。
僕は当時、部活以外にクラブチームで相撲もしていた。
ある日の相撲の稽古の終わり
七瀬先生から電話がかかっていた。
稽古終わりですぐに折り返すと
「ごめん、稽古中だった?お疲れ様」といつもとは思いも依らないほど優しい
まるでお母さんのような愛のある声で僕を癒してくれた。
それだけで僕は疲れが吹っ飛んだのだ。
それからは部活中に指導されても「でもあの声だもんなー」と
思うとこれまでとは少し違う感覚があった。
修学旅行当日—。
僕はみんなとは違い部活の顧問が担任だから
携帯をこっそり持ち歩いたり夜中に抜け出して違うクラスの部屋に行くこともない
楽しくないわけでもなく楽しすぎるわけでもない微妙な感想の初日を終えた。
その時だった。
直也が僕に慌てて行ってきた。
「七瀬先生が発熱したらしい、もしかしたら先生だけ明日帰るって」
体調崩すような先生ではなくそんな話初めて聞いたから
よっぽど疲れが溜まったのだろう。
そして、次の日僕らのクラスには
バス会社が雇ったであろうマスクをつけたバスガイドさんが
七瀬先生の代わりに引率をしてくれようと…
ちょっと待った!!!!!!!!!!!!!!!!!
僕はそのマスクをつけたバスガイドさんに
一目惚れをした。
可愛すぎる!!!!!!!
マスクをしていてもわかる美貌さ
芸能人で言うと「新木優子」のような可愛さだった。
僕は直也を誘いその「新木優子」に話しかけに行ったのだ。
「今日はバスガイドさんが引率してくださるんですか?」
「え?何言ってんの?」
僕は絶句した。
僕らが「新木優子」と呼んでいたそのバスガイドは
ただのマスクをつけた七瀬先生だったのだ。
今までマスクをつけた姿を見たことはなかったが
それはそれは絶世の美女で「マスク美人」などでは到底言い表せれないほど
それはもはや「マスク整形女」と行ったがちょうどいいほどだった。
僕はそれから卒業まで毎日七瀬先生がマスクをつけることを願っていたが
風邪を引くこともマスクをただつける日もなかった。
もう一度でいい僕はあの「新木優子」にもう一度会いたい。
僕はきっとマスク姿の七瀬先生に恋をしていたのだと思う。
稽古終わりのお母さんのような優しい声
マスクをつけると人格までも変わってしまうような美貌になる
「マスク整形女」こと本井七瀬
僕はあなたのことが大好きでした。
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