「ブタメンと文化祭」
中学1年生の秋—。
僕は文化祭の準備を進めていた。
文化祭と言っても中学の小さな文化祭だから
模擬店も近くのスーパーとかで買えるものを仕入れて
それをちょっと安く売るだけ。
逆転売ヤーだ。
参加できるのも一般の人はダメで学生のみ。
だから開催日も普通に平日。
そんな極小文化祭でも初めての経験だった僕はすごく楽しみにしていた。
僕のクラスはカルビーのポテトチップスを大量に買ってきて
それを売り捌く「ポテチ屋さん」
誰も興味ないと普通は思うがお菓子持ち込み禁止の中学では
これが例年大反響らしく今年は僕たちがすることに
その買出しを任された僕と僕の小学校からの幼馴染である沢村愛香だった。
愛香と僕は小学校の頃から遊んでいたグループが一緒で仲もすこぶる良かった。
普段は授業をしている時間に準備ができその上買出しを任された僕らは
学校を抜け出していいという特別ルールつきだったから何だかワクワクしていた。
しかも買い出しには先生も来ず僕と愛香2人きりだった。
近くのスーパーに着き早速店にある全てのカルビーのポテチを買い占めた。
「40個ぐらいあるよ」
「んーじゃあと2店舗ぐらいはまわんなきゃか」
そんなに必要だったかわからないがどうせ帰っても看板用のダンボールに絵を描く手伝いぐらいしかすることないし何より愛香と2人きりで準備をしているこの時間が
中学生の僕にはまるでデートのような感覚で長く続けばいいと思っていた。
「てか当日私たち同じ時間のシフトだったよ」
「そうなん?」
シフトは2人1組。
順番に回していくからペアはお店に立っている時間も休憩時間も一緒だった。
「竜秋一緒に回らん?」
「え…お、おう」
思いがけない相談に僕はただ驚き了承した。
そして数日後の当日—。
何店舗も回って用意したポテチはどこの模擬店よりも早く売り切れてしまった。
「どこ回る?」
「んーでもどこも、もうほぼ売り切れみたい」
ようやく休憩になった僕らの時間にはもうどの店もほぼ終わってしまっていた。
少し肌寒い季節。
先生たちの手作り豚汁や近くのセブンで大量に仕入れたおでん
ここら辺は開始30分ほどで売り切れたとのこと。
もう何も残ってないんじゃないかと思ったその時
駄菓子屋から仕入れた駄菓子を売っている駄菓子屋だけまだ空いていることに気付いた。
もうそれはコピーなんじゃないかと言ったただの駄菓子屋に2人で向かった。
愛香は4枚入った駄菓子界で一番美味しい「ポテトスナック」のフライドチキン味
僕はブタメンを手に取り駄菓子屋を後にした。
2人でブランコに座り愛香は袋を開けると同時に1枚ポテトスナックをくれた。
僕も分けれる駄菓子にすれば良かった。と申し訳なさを感じながら
ブタメンをすすった。
バイトもしたことない中学生に労働はかなり効いたらしく
僕も愛香もその美味しさが身に染みた。
「やっぱ私もブタメンにすれば良かった。」
そう言う愛香に僕は嫌がられるだろうなと思いながら1口進めた。
すると愛香は迷うことなく「え、いいの!?」と言い1口すすった。
「美味しい!」そう言い笑う愛香を見て僕は微笑ましくなった。
しかしその時だった。
愛香はあろうことかスープも飲み始めたのだ。
これは中学生には刺激が強すぎる!!!!!!!
箸だけでも「間接キス」を意識していたのに
これじゃ完全に「間接キス」じゃねえか!!!
慌てふためく僕を横目に「温ったまるね」と優しく微笑む愛香。
僕に緊張が走る。
このままもうスープを飲むことなく捨てるのが男の嗜みなのか…?
と言うかそれが男のマナーなのか!?
いや、待て!愛香がスープを飲む前に僕は飲んでいた。
と言うことは愛香は「間接キス」OK女子なのか?それとも俺だから…?
え、てことは俺にまさか気があるのか?!
いやそんなわけそんなわけないじゃないかあああ!!!!!
捨てよう…
僕に愛香の前で「間接キス」をドギマギせずかっこいい男として
行うことは不可能だった。
その時、愛香が他のクラスの友達から呼び出された。
「ごめんこのゴミ捨ててくれない?」とポテトスナックのゴミを渡された。
誰もいないブランコに1人になった僕は周りを見渡し
1口そーっとブタメンのスープを味わった。
初の「間接キス」の影響なのか
これまでに感じたことないコクのある旨みを中一で僕は感じたのだ。
もちろんそれはブタメン側の企業努力なのだろうけど
それはクラスメイトの「間接キス」を奪ったと言う背徳感からくる旨みだったのかもしれない。
僕は「ブタメン間接キス女」こと沢村愛香にこの瞬間恋をしたのだった。
僕に初めて「間接キス」のドキドキハラハラ感を教えてくれたのは
間違いなく愛香だった。
数日後みんなで遊んでいる際、直也が自販機で買えるあったかいコーンスープを
飲んでいると1口愛香が貰って飲んでいたから
きっと愛香は何も気にしないタイプなだけだったのだと思う。
それでも僕は綺麗な愛香から「間接キス」OK男子に認めてもらえた喜びが溢れていた。
笑顔で僕なんかと間接キスをしてくれた愛香
その可愛さとその素敵な愛嬌と屈託のない笑顔は今でも忘れられません。
今度同窓会でもあった時にはまたブタメンを一緒に食べましょう。
しかし今は彼氏もいるみたいなので2つ買いましょうね。
その時はブタメンぐらいぜひ僕に奢らせてください。
とても素敵でとても大事なことを僕に教えてくれた「ブタメン間接キス女」こと沢村愛香。
僕はあなたのことが大好きでした。
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