第1話 まずは名前を決めよう!
元気よく意気込んだはいいものの、私の
「あの、貴女のことをなんて呼べばいいですか?」
『そうですね……貴女様が呼びたい名前はありますか?』
「名前……私の名前は確か……ああ、でもあの名前はもう、いいや。私は、新しい私になる!だから、新しい名前を付けて欲しいな……」
ふと、脳内に追い出される前の名前が現れたが、私はそれを忘れ去るために頭を振った。
『そうですね……例えば、貴女の希望する生き方はどんなものでしょうか?』
頭の中に直接聞こえてくる声に自分の希望する生き方はどんなものか聞かれて考えていると色々な考えが浮かんできた。
「とんでもない力を手に入れて魔獣を倒して生きる?大金持ちになって楽しく生きる?誰かの幸せのために生きる?色々あって迷っちゃうよ……」
どんな生き方があるか考えていると、自分が一番目指したい生き方が浮かんできた。
「私は、夢を叶えて幸せに生きたい!」
『分かりました。では、【アプローズ】というのはどうでしょうか?この名前の元になったものは青い薔薇というもので【夢叶う】や【称賛】といった意味があります』
「【夢叶う】……【称賛】……決めた!私のこれからの名前は【アプローズ】!あとは、貴女の名前を決めないと!」
『貴女様の名前の由来は花言葉からなので、私も同じように考えると【プリムラ】というのはどうでしょうか?意味は【運命を切り開く】というものがあります』
「【運命を切り開く】……なんだかいい意味だなぁ……よし!今日から貴女のことを【プリムラ】と呼ぶことにする!そして、プリムラも私のことをアプローズと呼んで!」
『承知しました』
私の名前とプリムラの名前も決まり、これからどうするか考えていると、私の
「プリムラ!私の
『アプローズ様の能力は大きく四つあります。
一つ目は【
二つ目はこの
三つ目は【アプローズ様が他人の夢を叶えた時、叶えた能力を一部使える】です。こちらも強力ですが注意点もあります。それは、【能力は十個までしか使えない】というものです。また、この能力の中に【Dream come true】は含みませんので、ご安心して下さい。
四つ目は【他人の夢の大きさがわかる】です。これは実際に見てみないとわかりにくいですが、左胸が光っておりその夢が大きいほど光り輝いて見えます。
以上がアプローズ様の
「これが私の
自分の能力の内容を知って喜んでいたが、身体は正直なようで「グゥー」と、お腹を鳴らしてしまった。
「なんかお腹が空いてきちゃった……今はとっておきたいけど、侍女から貰った金貨を使うしかないかな?」
なけなしの金貨を今使うかどうか考えているとプリムラが助言をくれた。
『お言葉ですが、今金貨を使うのは避けるべきだと考えます。今のアプローズ様の年齢は六歳です。六歳の子供が金貨を持っていて、食べ物を買おうとして金貨を差し出すと金額を増やしたり、最悪事件性がないかどうか疑われしまいます。
ですので、アプローズ様の能力の【半年に一度アプローズ様の叶えたいことを叶える】というものを使うのはどうでしょう?幸いまだ四つ叶えることができるので使うのは悪くはない手段だと思います』
私はプリムラの助言にハッとした。
「確かに……六歳が金貨を持っているのはおかしいよね……なら、プリムラ!毎日、パンを何個か頂戴!」
『毎日パンを何個か渡すことはできますが、もしよろしければ、パンの質をお店では売れないくらいに落とすことでパンを一日に十個渡すことができますがどうでしょうか?』
プリムラの提案はとても魅力的だったので私は早速【願い事】を使った。
「それ最高!よし!早速能力を使おう!プリムラ!【お店では売れないくらいの質のパンを毎日十個】頂戴!」
私がそう言うとプリムラが『承知しました。それでは貴女様の夢、叶えましょう』と言い、私の目の前にパンが十個出てきた。
「やった!本当に出てきた!早速食べようっと!」
パンを齧った瞬間、少女の顔に水が滴り落ち、頬を伝う少し暖かい感覚があった。それは、追い出されて全てに絶望したが、未来への希望を取り戻せたことを実感したのか、単に空腹を満たせれたからなのかは分からない。
パンは確かに質は落ちていて少し硬く、パサパサしていたが、それでもその時の少女は小さな幸せを噛み締めていた。
♢♦♢♦♢♦
プリムラのひとりごと
この世界の通貨を日本円に変換すると以下の通りになります。
大金貨→百万円
金貨→十万円
銀貨→一万円
銅貨→千円
鉄貨→百円
石貨→十円
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