同級生の荻原


「荻原が途中合流した?荻原って誰だ」


「あれ、お前荻原のこと覚えてないのか。同じ中学にいた荻原だよ。そいつがさ、俺らが飲んでる店にたまたま入ってきて。俺らを見つけて久しぶりだなって声をかけてきてさ。俺の隣がちょうど空いてたからそこに座って途中からは3人で飲んだんだよな」


あー、荻原。あの荻原か。思い出した。思い出したが俺は中学の時そこまで荻原と仲良くはなかったはずだ。


確かに青木も荻原も同じ中学で同じ部活に所属していたけど。でも荻原とは長らく話していないぞ俺は。


「俺は荻原と最後いつ話したのか覚えてないんだが、お前は荻原と今でも仲がいいのか」


「いや、お前よりは仲良くないけどな。俺も最後にいつ話したのか覚えていない。ただ知らないやつってわけではないからな。


同じ部活仲間だったしな。久しぶりだったから話した。ただそれだけのことだな。向こうから声をかけてきたから断るわけにもいかないしな」


そうか。青木も荻原とはしばらく話していなかったのか。それにしても荻原はよく俺と青木のことが分かったな。俺らはあの時からあまり変わっていないってことなのだろうか。


「荻原が加わってからはまた中学の話をしたな。その話しかしなかったんじゃないかと思うくらい話したな。部活の思い出とか学校生活の思い出とか先生の悪口とかな」


そうか。まぁそうなるか。共通する話題で話すのが一番盛り上がるからな。特に長らく会っていない人同士の会話ならなおさらだ。


「で結局8時半くらいか9時近くまで飲んだと思う。で割り勘して別れたな。あー、そうだ。別れる前にお前席の下にショルダーカバンを置きっぱなしにしてて、それを会計中に俺が気がついて取りに行ってお前に渡してたな。忘れてるぞって。


会計は荻原がしてたな。会計してる間に俺はそのカバンの中身についてお前に聞いたんだよな。あまりにも軽かったから何入ってるんだって。こんなに軽いならカバンいらないだろって。


お前は今はポケットティッシュとハンカチと絆創膏くらいだけど、普段は500のペットボトルを入れてるって言ってたな。


その後寺田駅まで行ってお前と荻原とは別れたよ。お前らとは路線が違ったからな。そこからは知らん。お前は荻原と途中まで帰ったんだと思うぞ」


そうか。ならショルダーカバンは居酒屋まで、いや違うな。帰りの寺田駅まではあったってことか。


確かに中身はその程度だったか。他のものは入っていなかっただろうか。


「実はお前に電話したのには理由があってな。昨日の記憶がなくなったっていうのは本当で、どうやら俺はショルダーカバンをどこかに無くしたらしいんだよ。


今のお前の話が本当ならお前と寺田駅で別れるまではあったってことだよな」


「お前あのカバン無くしたのかよ。確かにお前は持ってたぞ。今言った通り居酒屋の席に忘れてたのに俺が気づいて渡したんだからな。


あー、そういえばお前と荻原はあの後カラオケに行ったんじゃなかったか。俺はパスしたけどお前は行こう行こうって乗る気だった。


こいつよく久しぶりに会ったやつと2人きりでカラオケ行けるなって思ったもんな。今考えればお前あの時からだいぶ酔っていたのかもしれないな」


そうなのか。俺昨日カラオケに行ったのか。記憶にない。もしそれが本当ならカラオケ店で忘れたのかもしれない。それか帰りの電車内か獅子舞駅のトイレで盗まれたか。


「なら荻原に聞けば分かるよな。ショルダーカバンについては。お前荻原のLINE知ってるか。知ってるのなら教えてくれ」


「お前それも覚えていないのかよ。まぁそりゃそうか。飲み会全ての記憶がないんだからな。昨日の途中に俺もお前もお荻原とLINEを交換したぞ。何かの縁だからって。消していなければ載ってるはずだぞ」


そうなのか。俺LINEも交換したのか。怖いな、記憶がない状態で個人情報を教えているようなもんじゃないか。


「そうか。なら荻原に聞いてみるわ。ありがとうな。お前が記憶なくなってなくて良かったわ」


「あぁ、また何かあったら電話しような。またな」


青木は電話を切った。俺はLINEの連絡先画面を見た。確かに荻原は登録されていた。俺は荻原に電話をかけた。

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