電話の相手
交番を出た俺はポケットからスマホを取り出しある人に電話をかけることにした。今日は日曜日。電話の相手は仕事が休みだから出るはずだ。俺はLINEを開きその男に電話をかけた。しばらくして相手は電話に出た。
「おぅ、どうした相田。昨日会ったばかりなのに」
電話をかけた相手は青木だ。昨日飲んだ男。昨日のことを知るにはこいつに聞くのが一番だ。
「実はな、昨日の飲み会について聞きたくて。なんの話したっけ」
「お前覚えてないのか。そんなに飲んでないと思うんだけどな。で、どこから話せばいいんだ」
青木は俺がなぜ知りたいのか疑問に思っていないらしい。
「昨日は17時半くらいに寺田駅に行ったんだよな」
「それは覚えているのか」
「いや、それもさっきまでは覚えていなかった。そこは妻に聞いて思い出した」
妻に聞かなければショルダーかカバンを無くしたことも昨日青木と飲んだことも忘れたままだった。妻には感謝だ。
「そうだよ。昨日はそれくらいに寺田駅に集合した。でその近くの居酒屋に行ったんだよな。だから店には18時前にはいたと思うけどな」
俺もそれは大体分かっていた。夕方出かけて寺田駅に集合ということから考えれば分かる。でも一応聞いた。そこから違う駅に出かけた可能性もあったからだ。
「居酒屋にはテーブル席とカウンターがあったんだ。店に着くとテーブル席は並ぶけどカウンターなら2人すぐ入れるって言われてカウンターで飲んだ」
「何の話をしたか覚えているか」
「うーん。全て覚えているわけではないけどな、病気の話と老後の話はしたな」
悲しいな。この歳になると病気と老後の話は定番になっている。後は親の介護とか終活の話とか。暗い話ばかりだ。
「後は何話したかな。中学とか高校の話もしたと思うけどな。俺はお前と中学までは一緒だったからな。中学の話は長くしたと思うぞ」
そうなのだ。青木とは小中は同じなのだ。高校から別になった。でも交流は今でも続く数少ない人だ。
「後はそろそろハロウィンだっていう話はしたな。だから今週の金曜日は渋谷に行くなよって忠告したと思う。お前は行くかよ、この歳になってなんてツッこんでだと思うな」
俺そんなこと言ったのか。というかこいつは細かいことをよく覚えてるな。
「そうか。特に俺が何か迷惑をかけたとかおかしな話をしたとかはなかったってことか」
そこが心配なのだ。知らない間に人に迷惑をかけている場合が実際にあったのだ。もしそうだとしたらちゃんと謝りたい。
「いや、そんなことは無かったな。途中荻原が合流したけど、その後も特にお前も荻原ももちろん俺も店には迷惑をかけてないよ。心配するな」
うん?青木は今なんて言ったか。荻原が途中合流した?荻原って誰のことだ。
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