無くしもの
自宅に戻った俺は手洗いうがいを済ませた後妻に昨日の服装や持ち物について特に変化がなかったか聞いた。
服装はおそらく朝目覚めた時に着ていたものだろうから特に変化はないはずだ。洋服もズボンも見た感じ俺が普段着ているものだった。
交番に行く前風呂に入る際にパンツやシャツといった下着類も見たはずだが、そこについても俺は特に違和感は覚えなかった。
「いつもの通りでしたよ。今朝あなたが着ていた服装でした。ただ昨日は洋服の上に上着を羽織っていましたね。
上着はお巡りさんとベットに寝かせる際に脱がしてクローゼットの中にかけました。後はいつものショルダーカバンを持って行っていましたよ」
そうだ。俺はいつもショルダーカバンを持って出かける。昨日もそうだったはず。財布やスマホは上着やズボンのポケットに入れる人だ。
財布やスマホは紛失していない。後今日見ていないのはショルダーカバンだけだ。
「そのショルダーカバンはどうした。今朝は見かけていないのだが」
「そういえばそうですね。昨日交番でも何も言われなかったですね。あなたどこかに忘れたかトイレで横になっている時に誰かに盗まれたんじゃないですかね」
その可能性はある。店に忘れていたのなら戻ってくるかもしれないが、盗まれたのならもう戻らないかもしれない。俺はあのカバンに何を入れていただろうか。
「そうか。分かった。ありがとう。一応交番に紛失届を出しておくことにする」
俺はそう言うともう一度交番に向かった。
***
獅子舞駅前交番を再び訪れると先ほどのお巡りさんがいた。
「おや、先程ぶりですね。どうされましたか?」
「実は紛失したものを思い出しまして。思い出したというか教えてもらったといいますか。それでまた来ました。どうやらショルダーカバンを紛失したらしいんですよ。スマホとか財布はあるんですが」
「そうでしたか。それでしたら少し待ってて下さい」
お巡りさんは少し移動して紛失届の紙を持ってきた。
「こちらの書類をお書き下さい。できるだけ詳しく書きていただけるとこちらも助かります。分からないところ、まぁお兄さんの場合記憶がない部分があるかと思いますがそこに関してはだと思うとかおそらくとか曖昧で書いてください」
そうだよな。おそらく途中は曖昧になってしまう。
「分かりました。分からないところ、覚えていないところも妻から聞いたことを詳しく書きます」
「えっと先程財布はあると言いましたよね。免許証など今身分を証明するものはありますか。最後まで書いてもらった後にこちらで確認をするので」
多分あるはずだ。というか俺はまだ今日財布の中身を見ていなかった。俺は財布を確認した。運転免許証、クレジットカード、何かのポイントカードにレシート。数枚の札が入っていた。
見た感じ大事なものは無くなっていない。ポイントカードとかレシートが一枚とか二枚とか無くなっているかもしれないが、もしそうだったとしても別に問題はない。
「あります。どうやら財布の中身はそのままらしいです」
俺はお巡りさんから借りたボールペンを使い書類の記入に取り掛かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます