第51話 汚染源への潜入と証拠の確保
陽菜の緊急の指示のもと、チームは三つの軸で行動を開始しました。
軸1: 現場への潜入とサンプリング
ラシードとムスタファ医師が、汚染源である放棄された採掘予定地へと、最も危険な潜入を開始しました。彼らは、陽菜が手配した小型の高性能水質検査キットと、東城が提供した武装勢力の検問所のシフト情報を武器に進みました。
水源地に着いたムスタファ医師は、その光景に愕然としました。放置された化学物質のドラム缶が破裂し、高濃度の有害物質が、地域住民の生活用水路へと直接流れ込んでいたのです。
ムスタファ医師は迅速に、汚染された水と土壌のサンプルを採取しました。この環境犯罪の動かぬ証拠は、国際的な非難と法廷闘争の鍵となります。
「ホシノ、証拠は確保した。だが、この汚染は広大すぎる。浄化には、大規模な技術と資金が必要だ」
ラシードは、無線で陽菜に報告しました。
軸2: デジタル情報戦と国際圧力
ニューヨークにいる東城隼人は、ラシードたちからのサンプリング情報を待つ間、国際的な圧力作戦を実行していました。
彼は、汚染物質が以前の採掘企業が使用していたものと一致すること、そして、この**「水を兵器とする環境テロ」がナブアでのFFDモデル成功への報復**であるという分析結果を、詳細なレポートとして作成しました。
陽菜は、この東城の分析レポートと、ムスタファ医師が採取した証拠の写真を添えて、国際連合人道問題調整事務所(OCHA)と国際刑事裁判所(ICC)に緊急訴えを行いました。
彼女の**「叫び」は、この行為が「人道に対する罪」**であると断定し、即座の介入を求めました。
軸3: 資金の緊急活用と浄水技術の調達
陽菜は、GFET(グローバル・フード・エシックス信託)の緊急資金を即座に動かし、汚染水の浄化技術と、現地への緊急医療支援に充てました。
彼女が着目したのは、紛争地帯での使用に特化した、小型で移動可能な太陽光駆動型の高性能浄水システムでした。
これがあれば、汚染された水源を使わず、地域の別の水源から安全な飲料水を確保できます。
「東城さん、浄水システムの調達ルートを確保し、数日以内に現地に空輸してください。水がなければ、ムスタファ医師も治療を続けられない。命を救うための行動に、一切の遅延は許されないわ」
陽菜のチームは、環境犯罪の証拠を確保し、国際的な圧力をかけると同時に、現場の命の危機を救うための具体的な行動を、猛スピードで展開していました。彼女の知恵と行動する勇気が、水の汚染という新たな闇に立ち向かっていたのです。
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