第50話 汚染された水と新たな闇の影
陽菜、東城隼人、ラシード、そしてムスタファ医師のチームは、ナブア隣接地区へ移動しました。この地区は、深刻な水の汚染によるコレラなどの感染症が蔓延し、多くの子どもたちが命の危機に瀕していました。武装勢力の残党が支配しており、支援は極めて困難でした。
ムスタファ医師は、到着するや否や負傷者の手当てに取り掛かりましたが、悲惨な状況に顔を曇らせました。
「星野顧問、これは単なる水の汚染ではない。水源が意図的に、そして広範囲にわたって汚染されています。大量の化学物質が流されています。現地の貧しい人々が使える水は、もはや飲用不可能です。」
東城隼人は、直ちに水源の汚染源の特定に取り掛かりました。彼のデータ分析は、驚くべき事実を明らかにしました。
「星野顧問、汚染源は、以前IDB会議で私たちが阻止しようとした採掘予定地です。採掘企業の残党が、環境保護のために放置された化学物質を、コミュニティの水源に意図的に流しています。彼らは、FFDモデルが成功したナブアへの報復として、隣接地区を**『住めない土地』にすることで、私たちの倫理的勝利**を無力化しようとしているのです。」
これは、陽菜が次に挑むはずだった環境倫理の課題が、最も残酷な形で現実となった瞬間でした。闇の勢力は、「水」を兵器として使い、食料生産と命の根源を破壊しようとしていたのです。
陽菜の**「人を思う前向きな心」は、この非道な行為に激しく揺さぶられました。
「彼らは、フードロスだけでなく、命の源である水までをも、自分たちの利益のために利用しようとしている。彼らの倫理の欠如**は、底知れないわ。」
ラシードは、武装勢力の支配下にある地域への立ち入りを提案しました。
「ホシノ、俺はここを熟知している。水源地への最も安全なルートを見つける。しかし、奴らの検問は厳しい。東城の情報戦で、彼らの注意を逸らす必要がある。」
陽菜は、再び**「知恵と行動する勇気」**の連鎖を発動させました。
汚染源の特定と証拠の確保:
ラシードが先行し、水源地を特定。ムスタファ医師が汚染物質のサンプルを採取し、環境犯罪の動かぬ証拠を確保する。
国際的な世論への訴え:
東城が、この**「水を兵器とする環境テロ」**の情報を、証拠と共に国際的な環境監視団体と人権団体に一斉に公開し、武装勢力への国際的な圧力を最大限に高める。
緊急の水資源確保:
陽菜は、GFETの資金を緊急に活用し、汚染されていない遠方からの安全な水と、簡易な浄水キットを空輸するためのロジスティクスを、国際赤十字と協力して構築しました。
陽菜の戦いは、今、命の源である水を守り、子どもたちの未来を守るという、最も基本的な人道的倫理の戦いへと戻ったのです。
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