第49話 バトンと試練、希望の自立
陽菜の「デジタル透明性プロジェクト」が成功し、ナブア紛争地帯のコミュニティは、闇の勢力による不信感の操作から完全に解放されました。FFDモデルによる食料生産と教育の再建は軌道に乗り、地域には活気と未来への夢が満ちていました。
陽菜と東城隼人は、国際的な倫理監査官としての次の使命(資源開発の倫理の監視)へ向かうため、ナブアを離れる準備を始めました。
「ホシノ、お前のおかげで、俺たちは単なる支援の受け手ではなく、自立したコミュニティになることができた。お前の叫びは、俺たちの行動になった」
ラシードは、感謝の気持ちを込めて陽菜に言いました。
「これは、あなたたちの人を思う前向きな心が実現させたことよ」
陽菜は答えました。
「でも、私の仕事はまだ終わらないわ。FFDモデルをナブアの成功例として世界に広げる。そして、あなたたちには、この希望の連鎖を次のコミュニティへと広げる担い手になってほしい」
陽菜は、ラシードとムスタファ医師に、FFDモデルを他の紛争地帯や貧困地域に適用するための**「希望の連鎖パイロット・プログラム」**のリーダーを担うことを正式に依頼しました。
しかし、その時、ムスタファ医師の顔に深い憂いが浮かびました。
「星野顧問、私たちは挑戦します。しかし、ナブアの隣接する貧困地区で、今、水の汚染による深刻な健康被害が出ています。特に、子どもたちの間で感染症が広がり、医療品がほとんど届いていない。その地区は、武装勢力の残党が依然として強く、ラシードたちのチームが安全に立ち入るのが極めて難しい場所です。」
ムスタファ医師は続けました。
「私たちは、ナブアでの成功に満足して、隣の悲劇を見過ごすことはできません。しかし、私たちだけでは、その壁を越える権威も資金もありません」
ナブアでの成功は、「自立」という大きな成果をもたらしましたが、その隣の地域では、「命の危機」という新たな試練が待ち構えていました。陽菜の築いたFFDモデルは、「ナブアの壁」を越えて、「隣の悲劇」にも手を差し伸べるだけの、強さと共感力が求められていたのです。
陽菜は、ラシードとムスタファ医師が、ナブアの希望を守るだけでなく、隣人を思う心を持っていることに、深く感動しました。
「東城さん、私たちの次の使命の目的地を、一時的に変更します。国際開発銀行の会議ではなく、ナブアの隣接する貧困地区よ」
陽菜は即座に決断しました。
「承知しました。その地域を支配する武装勢力は、過去に我々が追っていた闇の勢力と資金的繋がりがあります。彼らが最も恐れるのは、透明性と教育、そして命の価値を訴えるあなたの叫びです」
東城は冷静に分析しました。
陽菜の行動する勇気と人を思う前向きな心は、彼女自身に、そしてラシードたちに、**「希望の連鎖は、国境や壁では止まらない」**という、次の大きな使命を与えたのです。
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