第12話 光の羅針盤
武装勢力「影の牙」の襲撃阻止は、陽菜の衛星通信によるライブ配信が決定打となった。彼女の命懸けの「叫び」は、組織の不正と紛争を永続させる闇の存在を世界に決定的に知らしめた。陽菜は、銃弾ではなく、情報と倫理という、現代において最も強力な武器で勝利を収めたのだ。
この一連の出来事は、国際社会に激震をもたらした。陽菜の告発によって内部の不正に関わっていた一部の幹部、そして武装勢力と結託していた輸送責任者たちは、次々とその悪事が明らかになり、国際的な捜査機関によって逮捕・訴追され、厳正な処分が下された。「グローバル・ハート」は、一部の裏切り者によって組織としての信用を大きく損なったが、陽菜の命懸けの告発が「組織の自浄作用」として高く評価され、国際社会は解体処分を見送った。
その代わり、組織の存続に向けた徹底的な改善と透明性の確保が厳しく求められることになった。
陽菜は、一躍、世界の倫理的ヒーローとなった。彼女の行動は、単なる支援活動ではなく、
「世界の課題に見て見ぬふりをしない、行動する勇気」
の象徴として、世界中の良識ある人々の心を動かした。彼女の「叫び」は再び国際的な注目を浴び、彼女こそが、腐敗した国際支援のシステムを変革する「光の羅針盤」であると称賛された。
本部の上層部は、陽菜の行動が組織への裏切りと見なされかねないものでありながら、その結果が、組織を根本から浄化し、存続へと繋いだことを認識していた。
バーネット統括のような、当初は陽菜に厳しかった者たちも、その命懸けの献身に敬意を払わざるを得なかった。
本部理事会は、陽菜に対して異例の決定を下し、懲戒処分を撤回した上で、新たに
**「グローバル・ハート 透明性・倫理監査 特別顧問」**
という役職を創設し、彼女に任命した。
「星野陽菜。君の行動は、規則を破った。だが、その行動がなければ、我々は存在しなかった。この役職は、君が今後も外部の視点、現場の視点から、組織のあらゆる不正と非効率性に『叫び』続けるためのものだ。君のいる場所が、新しい本部の現場となる」
と告げられた。
この決定は、陽菜の活動の場を、単なる現場責任者から、組織の構造そのものを変革する立場へと引き上げた。
陽菜は、ラシードやムスタファ医師に別れを告げた。彼らは、陽菜が築いた地平線ルートを、さらに強固な地域共同体の支援システムへと発展させることを約束し、「私たちは、お前の言う通り、飢餓、教育、医療格差に、組織を待たずに立ち向かう。お前は世界の会議室で叫び続けてくれ、ホシノ」と力強く言った。
陽菜は、再び先進国の本部へと戻る。
しかし、彼女が向かうのは、豪華なオフィスではない。彼女の役職は、組織の内部から世界の課題と向き合い、紛争を永続させる構造そのものに挑むことを意味していた。彼女の次なる「叫び」は、不正のない透明な支援システムの構築、教育を通じた貧困の根絶、そして先進国の構造的な責任の追及へと向けられる。
星野陽菜の戦いは終わらない。『陽菜の叫び』は、組織の再生と、世界の課題の解決を目指す、新たなフェーズへと続いていく。
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