第2章 放浪編【1】
応仁の乱以降、数十年続く戦乱の世。
全国の領主は領地を広げるために合戦を繰り返す。
奪った土地を配下に与え、民を支配する封建制度全盛時代で
一番つらいのは農民たちだ。
丹精込めて収穫した米のほとんどを押収され、ときには労働や戦に駆り出される。
理不尽な話だがそれがまかり通る。
双葉はこんな世の中が大嫌いだ。
一日でも早く戦乱の世を終わらせたいと心より願う。
古今東西、戦乱の世は必ず終わりを告げている。
この日の本の国も例にもれず、いつかは太平の世を迎えるに相違ない。
叶うものならこの目で見たいものだな、戦のない世を。
そんなことを考えながら博多の町を歩いていると、前方に人だかりがありなにやら騒がしい。
人ごみをかき分け前に出ると、どうやら南蛮人とその従者にごろつきどもが因縁をつけているらしい。
見るに見かねた双葉はごろつきの一人に背後から忍び寄り、軽く背中を突いた。
二人目、三人目も同様に突つくと全員硬直した後崩れ落ちた。
残りは親分らしき大男だけだ。
大男は手下たちが急に静かになったのでふと後ろを見ると双葉が立っていた。
(なんだ,このチビは?こいつが俺の手下どもを皆倒したのか?)
大男は双葉の胸のあたりをみてから「文句がありそうだな、小僧⁈」
胸への視線に敏感な双葉は「今、どこを見てからほざいた?」と。
(小僧じゃなくて小娘なのか、まさかあの胸で?)
「当然、、、胸だ!」
「泣いて許しを乞うても絶対許さぬ!」
哀れな大男は徹底的にボコられ続けた。
本来の実力差なら一撃で済むのだが敢えてそうしなかった。
理由は言わずもがな⁈
普段は冷静で温厚な性格だが胸が原因で頭に血が登った時は執念深く残忍になる。
顔つきさえ変わる。
同一人物とは思えないほどに。
気が済むまで殴ると冷静になった。
大男の顔は倍近くにはれ上がっている。
これぐらいにしてやるか。
南蛮人はルイス=フロイスと名乗り双葉に礼を言ってから、2種類の野菜の種を分けてくれた。
人参とカボチャの種で現時点ではまだ日の本では栽培されていないという。
育て方から種の取り方まで詳しく教えてもらい帳面に記録した。
双葉はこの二つの種が軍資金稼ぎの切り札になると直感した。
種を懐にしまい込みフロイスに深々と頭を下げた。
双葉は思わぬ収穫に顔をほころばせながら港をぶらついている。
(何とか堺の町まで船でいけないだろうか。徒歩なら1か月近くかかるが
速い船なら10日かからずに着ける。)
少し先に着いたばかりの船が積み荷を載せ始めていた。
(なかなか速そうな船だな。ダメもとで頼んでみるか。)
積み荷を運ぶ船員や人夫に支持を出している人物に
「人手が足りないよう見えますが、手を貸しましょうか?」
小柄な双葉を見て断りかけたが、思い直したようで
「運べそうな荷物を選んで船倉まで運んでくれれば助かるよ。」
「承知しました。」
かなり重そうな荷物を軽々と運びだすと皆目を見開いて驚いた。
積み荷を全て運び終えると
「助かったよ、見事な働きっぷりだ。儂は船主の善兵衛、報酬は弾ませてもらうぜよ。」
「報酬はいりませぬ、その代わりにそれがしをこの船で堺の町まで乗せてもらえませぬか?」
「ほう。なぜこの船が堺の町に寄港するると思うのかな?」
「高価そうな積み荷がたくさんありましたし、 堺の町で売るのが利益が大きいかと。」
「その通りだ。よかろう、向こうに着いた時に積み荷を降ろし、航海中は掃除や雑用もするなら乗せてやってもよい。」
「有難い、是非ともお願いします。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます