ゴクせん
3年B組に、新しい教師がやってきました。
「押っ忍、おら、極道。主にノミ屋で生計を立てていたのだが、何の因果か、今日から君らの担任教師だ。すなわち極道の先生――ごくせんと呼んでくれ。みんなよろしくな」
B組は不良の溜まり場ですから、当たり前のように反発します。
「何が、ごくせんだ。げ〇を降りかけて進ぜようぞ」
「じゃあ私は唾を吐きかけてやるのだわ」
「さすれば俺は、〇糞してくれん」
「しかあらば、ぁたしわ、尿を漏らし申すぞ」
ごくせんは、不良軍団の暴力行為に大ピンチだったのですが、しかし踏んできた場数が違います。
〇ろや唾やう〇こやおし〇こをそのまま、全部ごくごくと飲み干したのでした。
「ま、まさか、伝説のノミ屋!」
「道を極め過ぎだぜ?」
「それとも、ごくごくとなんでも飲み干すから、ごくせんなの?」
「いや、そんなことはどうでも良い。ありのままの俺たちを全部受け入れてくれたのは、ごくせんだけだ!」
「ごくせん! ごくせん!」
生徒たちは皆、ごくせんに擦り寄って、そのお膝を奪い合うのでした。
「あはは、こらこら喧嘩をするなよ?」
ごくせんは爽やかに笑います。
しかし、級長だけは一人、自分の席で冷やかでした。
「……ただのスカトロの変態だろ。そもそも、皆はノミ屋を『飲み屋』と勘違いをしているようだが、そういう職業じゃねえんだぜ?」
その姿が、ごくせんの目にとまりました。彼女は、級長に鋭い視線を送ります。
まずい。
ここで担任に目をつけられては、今までちんころとおべっかで稼いできた内申が、水泡に帰すかもしれません。
――ごろにゃーん。
級長は慌てて、皆に倣ってごくせんへ擦り寄りましたが、既に時遅しか。
ごくせんは、級長への厳しい視線を逸らしません。
しまったあ、俺の一生の不覚、と級長は悔みました。
しかし実際のところ、ごくせんは、級長のう〇こを食べたいなあ、と思っているだけなのでした。
かくの如く、人間は同じ種であるにも拘らず、その思いには多少ならずともズレが生じるわけで、やがてそれは見えないひびと化し、惨劇の因果となるわけです。
人間の悲哀は、そこに全て起因していると、私にはそう思えてなりません。
そぼ降る雨が涙のようです。(完)
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